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4年生の今月の本


またたびトラベル タイトル またたびトラベル
著者 茂市 久美子
出版社 学習研究社
 

 またたびトラベルは、ふつうの旅行会社ではありません。もしも、あなたが、温泉に一泊旅行したいと思って、またたびトラベルに行ったとします。希望どおり、温泉旅行の手配をしてもらえることは、まずないでしょう。たいていのばあい、自分の望みとは、ちがうところへ旅行することになります。旅行の代金も、お金ではありません。

 夜おそく、会社からの帰り道、雨宿りをするために三郎さんはまたたびトラベルをおとずれました。

  またたびトラベルの中にはちょっとつり目の若者(わかもの)が机についていました。ただ、雨宿りしにきたというわけにはいかないので、三郎さんはお話だけでもと、こしの痛みにきく温泉がないかとたずねました。 すると、
「お客さんには、温泉よりも、よいところがありますよ。善は急げって言いますから、これからお出かけになっては、いかがですか?」
とまたたびトラベルの若者に今から出発する旅行をすすめられました。
「そんな、いきなり、ちょっと待ってください」
と三郎さんが言うにもかかわらず、
「これから、けやきの森公園に行ってください。公園の入り口のところに、うち専用の車の発着所がありますから。今だったら、ええと……。」
若者は、うで時計に、ちらりと目をやりました。
「今、十一時をまわったところだから、十一時半の出発では、どうですか?」
「いくらなんでも、これからすぐにだなんて。どうも、おじゃましました。」
三郎さんは、あわてて立ち上がると、にげるように外に飛び出しました。

「なんだか夢でも見た気分だな」

  三郎さんが、帰り道にあるけやきの森公園の入り口までさしかかると、『またたびトラベル専用発着所」というバス停の丸い行き先表示板のようなものが立っていました。
「まさか、うそだろう。なんだか夢の続きを見ているみたいだ。」

  三郎さんが、あっけにとられていると、通りのむこうから、ぽんこつの車があらわれて、三郎さんの前で止まりました。
「おまたせしました。どうぞ。」

  車の窓から顔を出した運転手は、さきほどのまたたびトラベルの若者だったのです。

【 またたびトラベルなんて変わった名前ですが、物語を読んだらきっと納得(なっとく)しますよ。心に一生残る旅を演出(えんしゅつ)してくれるというまたたびトラベルに一度行ってみたいものですね。】

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