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4年生の今月の本


トレモスのパン屋 タイトル トレモスのパン屋
著者 小倉 明
出版社 くもん出版
 

 トレモスの町に、ポルトという名前のパン焼き職人がいました。かおに目立つとくちょうもなく、平凡(へいぼん)なようすをしていましたが、パン焼き職人としては有名で、遠くはなれた町からわざわざ車にのってポルトの焼いたパンを買いにくるお客が、なん人もいたほどです。ポルトの店には、ポルトの奥(おく)さんとパンを売る店員のほかに、弟子(でし)が3人もいました。

 ところがある日、思いがけないことがおこりました。よりによってポルトの店と道をへだてた真ん前に、ポルトの店とおなじようなつくりのパン屋が開店したのです。
――トレモス一のパン焼き職人であるわたしの店の真ん前にパン屋が店をひらくとは、なんとむこう見ずなことだろう!
  ポルトは半分ふんがいし、半分あきれました。

 ポルトの店の前に店びらきしたそのパン屋は、店の入り口をきれいな花やテープでかざりたて、「開店記念・全品半額(はんがく)セール」という大きなかんばんを出しました。すると、いままでポルトの店のパンをほめていたお客たちが、へいきで道のむこうがわの店の前でぎょうれつをつくりました。でも、ポルトはすこしもあわててはいませんでした。
「あたらしいパン屋がめずらしいだけなんだ。きっとお客は帰ってくる。なにしろぼくはトレモス一のパン焼き職人なんだからな。」

 四日たち、一週間たつうちに、ポルトの考えが正しいことが証明(しょうめい)されました。ポルトの店にかおを見せなかったお客が、またもどりはじめたのです。店はまた、前のように活気(かっき)をとりもどしました。道のむかいがわのパン屋には、もうほとんどだれも買いにゆきません。しかし、ポルトは店が前のようににぎわっているのに、どうしてもはればれとした気持ちになれませんでした。ポルトにはどうしても気になってしかたがないことがあったのです。それは、三人のお客だけは、ついにポルトの店にもどらなかったということです。

【 なぜ三人のお客はポルトの店にかえってこないのでしょう? ポルトの苦悩(くのう)がはじまります。】

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