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5年生の今月の本



                 オーロラの下で
                  タイトル オーロラの下で
著者 戸川 幸夫
出版社 金の星社(フォア文庫)
 

 どこまでも広がる、雪と氷でうめつくされた白一色の世界。その大地のはてからうかび上がってくるひとすじの黒い線――エスキモーの犬ぞりである。生活に必要なものをつんで部落へ帰るとちゅうだ。そりを引く犬は9頭。そのリーダーは、美しい目をした若(わか)いめすのハスキー犬で、ユーコンという。帰りを急ぐあまり、ろくに休養もとらず走りつづけたので、犬も人も疲(つか)れきっていた。

 とつぜん、ぶきみなほえ声がひびいた。オオカミだ。この季節のオオカミはおそろしい。一度えものを見つけたら、悪鬼(あっき)のようになってしつこくおそってくる。

 犬ぞりはオオカミに囲まれた。犬が1頭、また1頭とオオカミのえじきになっていく中、もう助からないと知ったエスキモーの老人は、ユーコンを放した。
「おまえだけでも生きて帰って、わしらのことを伝えてくれ」
と言って――。

 月日が流れた。美しくかしこいユーコンは、オオカミの王に気に入られ、オオカミのむれの中でくらしていた。王とのあいだに「吹雪(ふぶき)」という子どもも産まれている。吹雪は、からだ全体がまっ白な毛でおおわれ、ルビーのように赤い目をもつ、りこうな子オオカミだ。だが、吹雪を目のかたきにしてつけねらう若いオオカミがいた。吹雪より1年早く生まれた「黒毛」である。黒毛も王の子どもで、吹雪にとっては腹(はら)ちがいの兄だが、その母親から受けついた性質(せいしつ)は気むずかしく、意地悪だった。自分たちとちがう、白い毛皮をもつ吹雪が目ざわりでならなかった。

 ある日、小さなことがもとで、吹雪と黒毛はしょうとつした。黒毛はようしゃなく吹雪をいためつけた。母犬のユーコンが助けに飛びこんだが、強い黒毛の敵(てき)ではない。このとき王があいだに入らなかったら、ユーコンと吹雪は死ぬことになったかもしれない。

 王を中心にまとまっていたオオカミのむれに変化がおとずれたのは、その翌(よく)年だった。狩(か)りをしていた王がけがをしたのだ。きずついた王を、黒毛はもう王とはみとめなかった。王は自分に力がなくなったことをさとり、さびしくむれからはなれていった。そのときから、むれは、黒毛グループと吹雪グループの二つに分かれ、ことあるごとに対立するようになる――。

【 母犬ユーコンの愛情に守られ、オオカミ犬としてたくましく成長した吹雪が、やがて人間社会に帰り、そり犬としてりっぱに役目を果たすまでの、一大叙事(じょじ)詩ともいえる作品。】

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