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5年生の今月の本



                 たまたまうっかり動物園(1)
                  タイトル たまたまうっかり動物園(1)
著者 河合 雅雄
出版社 小学館
 

 ひげ小父(おじ)さんは、不思議な人です。いつも風のようにあらわれて、いろんな動物の話を聞かせてくれ、また、風のように姿(すがた)を消してしまいます。小父さんのほんとうの名前を子どもたちは知りません。どのぐらいの年齢(ねんれい)なのかも、不明です。職業(しょくぎょう)もはっきりとはわからないのですが、動物園からたのまれて、いろいろな動物を生けどりにしたり、博物館の仕事で、めずらしい貝や化石を集めたりして、世界中をとびまわったりしているそうです。ですから、動植物について、とてもくわしい知(ち)識(しき)と経験(けいけん)をもっています。動物の心がわかるし、動物と話ができるのです。

 小父さんは、久(ひさ)しぶりに会った子どもたちに、
「どこに行ってきたの」
と聞かれて、こう答えました。
「フクロウになって、動物園に行ってたんだ」
「フクロウになるって?」
と、史郎(しろう)。
「ハハハハ。夜の動物園へ行ってたということ」
「クロサイがとてもゆううつそうなんで、話を聞いて、なぐさめてやったんだ。飼育(しいく)の人に聞くと、ときどきすごくあばれるらしいんでね」
「動物たちは、ときどき古里(ふるさと)にいたときのことを思い出して、さびしくなったりすることがあるのさ。遠いところから連れてこられたんだからね」
「かわいそうにね。動物園って、まるで収容所(しゅうようじょ)みたいじゃない」

“ハッハッハ”ひげ小父さんは明るい声で笑ったので、子どもたちは、意外に思いました。
「まあね、動物たちにいわせると、人間のたくらみにかかってつかまえられたのではなくて、なんかのはずみ。たまたまつかまったか、うっかりしていて、いつのまにかここへ連れてこられた、あるいは、自分からすすんでつかまえられてやったんだ、と思っている」
「動物って、とても気位(きぐらい)が高いんだなあ。それにしてもあの強いサイが、どうしてここへ?」
「それが傑作(けっさく)な事件(じけん)なんだ。おとついの夜、クロサイが聞かせてくれた話をしてあげようかな」

 そういって小父さんは、大きなパイプから白煙(はくえん)をポワーとはき、笑(え)みをうかべました。さて、その話とは?

【 動物学者でおなじみの河合雅雄さんが、小学生のために書いたとっておきの本。1~3までのシリーズとなっていますが、本書は、1巻目の「星から来たペンギンの話」。】

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