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5年生の今月の本



                 家出の日
                  タイトル 家出の日
著者 キース・グレイ
出版社 徳間書店
 

 ――家出ってわけじゃないんだ。ほんとうの家出とは、ちがうんだから。そんなつもりじゃないんだから。

 ジェイソンは、リバプールに向かう特急列車に乗りこんだ。列車は、九時三十分発だ。心臓が、こんなにすごいいきおいでドックン、ドックンとするなんて、思ってもみなかった。

 九時二十八分。ヒル先生が出席をとりおわったころだ。ぼくが学校にいないのは、もうわかっているだろうな。

 親友のベンには、歯医者に行くと言っておいた。

 あいつ、言ってくれたかな。言ってなかったらどうしよう。みんなにばれたら、どうなるかな……。

 列車が動きはじめた。もう、もどれない。そう思ったら、妙に不安になった。

 きのうの夜、父さんと母さんが、またけんかをした。ものすごいどなり声で。

 遠いリバプールに行くことにしたのは、兄さんにあうためだけじゃない。家を出てしまいたかったんだ。あんなめちゃくちゃな家、もう、いやだ。

 ジェイソンは、トイレに行きたくなった。列車の連結部分にあるトイレはふさがっていた。ノックをしようかとジェイソンがまよっていると、急にトイレのドアがあいた。ドアから顔を出したのは子どもだった。その子は通路をすばやく見まわして、ジェイソンにたずねた。
「あいつ、もう、通ったかな?」

 その子はきっぷを持っていないので、車掌に見つかるとまずいのだという。

 ジェイソンが、あっけにとられていると、その子は、ジェイソンをトイレの中にひっぱりこんだ。
「ねえ、おまえも、家出屋?」

【 列車内で自由に暮らすという「家出屋」と名乗る子どもに出会い、ジェイソンは自分とその境遇を見つめなおします。
  短く、疾走感あふれる作品。それでいて、子どものこころの動きをていねいに描いた作品です。】

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