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5年生の今月の本


筆箱の中の暗闇 タイトル 筆箱の中の暗闇
著者 那須 正幹
出版社 偕成社
 

 五年生なのに、アキラはまったく泳げない。いわゆるカナヅチなのだ。五年一組でカナヅチはアキラだけだ。運動の苦手なテツオだって平泳ぎで五メートルは泳げる。水泳の時間、たったひとり、プールのはしっこにつかまって、水に顔をつける練習をするのは、あまり格好のいいものじゃない。去年までは仲間が三、四人いたのだが、その子たちも今年は泳げるようになり、みんなといっしょに泳ぎはじめた。

 明日は、水泳の時間のある日だ。しかし、雨が降れば水泳はお休みになる。明日は雨が降りますように。その日はお祈りがきいたものか、一校時あたりから激しい雨になり、三校時めの水泳はお休みになった。雨は午後になるとやんで、雲間から初夏の太陽が顔を出した。

 放課後、日直の仕事に手間どってしまい、アキラはひとりで教室を出た。だれもいない運動場には、あちらこちらに水たまりができて、風が吹くたびに、水面に小さな波がたっている。そのとき、目の前のさざ波の中から人間の頭のようなものが浮かびあがった。

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