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5年生の今月の本


言葉屋 言箱と言珠のひみつ タイトル 言葉屋 言箱と言珠のひみつ
著者 久米 絵美里(作) もとやま まさこ(絵)
出版社 朝日学生新聞社
 

 町の高台に、詠子のひいおばあちゃんの代から立っている古い木造の二階建て。それが、おばあちゃんのお店、「ことむら」だった。「詠子ちゃんは、きっとコトダマいらずの子に育つね」去り際にそう言ったお店常連・藤居さんを見送ると、おばあちゃんがちょうど階段の横の扉から出てくるところだった。詠子は、その扉の向こうに広がるおばあちゃんの工房に、一度も足を踏み入れたことがなかった。“この部屋に入ってはいけないよ”小さいころにたった一度だけ言われた。しかし、詠子はその扉の向こうがずっと気になっていた。
 その次の週、詠子は夕飯の席で、用意していたその台詞をそっと口にした。「おばあちゃん、お店のレターセット、見てきてもいい?昼間はいつお客さんが来るかと思うと、落ち着かなくて……。だから、お客さんがいない時に、ゆっくり選びたいの」詠子は、自分の瞳が不自然に揺れてもわからないよう、うつむいて顔を隠し、それから自分のお茶をゆっくり飲みほした。その間、おばあちゃんからの返事はなく、詠子の湯のみを持つ手が少し震えた。

●おばあちゃんの本業は『言葉屋』。言葉屋といっても、言葉そのものを売っているわけじゃない。言葉屋があつかっているのは、言葉を口にする勇気と、口にしない勇気。入ってはいけないと言われた部屋に入り、おばあちゃんから言葉屋について聞いた詠子は、まずは言珠職人を目指します。

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