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5年生の今月の本


窓をあけて、私の詩をきいて タイトル 窓をあけて、私の詩をきいて
著者 名木田 恵子
出版社 出版ワークス
 

――サクヤが家出した。
LINEのその文字だけが浮き上がり、目に突き刺さった。とっさにたちあがりクラっとなる。
ああ、わたしのせいだ。きっとそうだ。息をすいこみ、暁生のLINEをきちんと読みなおす。

いつもより礼儀正しい暁生のLINEからは、なんとなく気まずそうな雰囲気が伝わってくる。わたしにLINEするのも勇気がいったかもしれない。それでも、暁生らしいさりげない気づかいを感じた。
暁生は、わたしと咲野の仲がこじれて疎遠になっていることで、ずっと気をもんでいた。
また暁生からLINEが届いた。

――知らせてくれたのは、ゲンなんだ。
「ゲン……」思わずスマホに向かって声をあげる。

暁生の家は、左どなりの二軒先。そして、咲野の家は、右の角を左に折れて三軒目。
「うちとアキオとミドんち、線で引くと三角形になるね」
そう言ったのは咲野だった。

家が三角形で結ばれているように、わたしたちも特別の絆で結ばれた、「鋼の三角形」だと思っていた。
枇々木眩(ひびきげん)があらわれなかったら、私たち三人は、ずっとあのままの関係でいられたのだろうか。

わからない――。
その方がよかったのかどうかさえも。

★芦原咲野(あしはらさくや)と井辻暁生(いつじあきお)、そして、香椎水鳥(かしいみどり)は三歳の頃からの幼なじみ。それぞれの家の事情を抱え、サクヤはミドの家に泊まることも多く、アキオも部活の帰りにミドの家でご飯を食べて帰ることが日常だった。中学2年生の9月、ミドは枇々木眩(ひびきげん)と出あう。ゲンはヤクヤの塾のクラスメイトであり、アキオとは空手道場で知り合った友だちだった。ミドとゲンがであったことで、鋼と思っていた三角形がだんだんと変わっていく。

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