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> 空をとんだQネズミ
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タイトル | 空をとんだQネズミ |
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著者 | 今村 葦子 | |
出版社 | あかね書房 | |
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Qネズミは、ふるびた家の、ふるびたかべを見つめました。みんながひっこしていって、からっぽになった家は、まるで、ごみすて場にすてられた箱みたいでした。いまは見すてられたQネズミのふるさとの家は、ながいながいあいだつづいた、お米屋さんでした。その家がとりこわされて、あたらしくコンビニエンス・ストアができることになったのです。まず、お米屋さんの一家が、ひっこしてゆきました。のこされたネズミたちは、なんどもなんども、みんなであつまって、そうだんをかさねましたが、けっきょくは、ちりぢりばらばらになって、このなつかしい家をでてゆきました。 <みんな、ぶじだろうか? いまごろ、どこで、どうしているだろう? みんながいってしまってから、何日たつんだろう> Qネズミは、もう何日も何日も、ひもじさとさみしさのなかにいたような気がしました。そのときです。家がさけび声をあげて、ぐらぐらと、ゆれうごいたのです。柱という柱、板という板のすべてが、きーきーときしんでいます。 <たいへんだ! これは、ゆめじゃないんだ!> Qネズミは、まっしぐらに、庭にとびだしました。そしてそれが、なつかしいふるさとの、お米屋さんの家との、おわかれでした。Qネズミは、なみだでいっぱいの目で、二、三度、たしかめるようにふりかえると、もう二度と、ふりかえろうとはしませんでした。こうして、Qネズミの、ひとりぼっちの旅がはじまったのです。 |