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5年生の今月の本


アンソニー -はまなす写真館の物語- タイトル アンソニー -はまなす写真館の物語-
著者 茂市 久美子
出版社 あかね書房
 

 海辺の町に、「はまなす写真館」という、百年以上続く古い写真館があります。この店のあるじは、五代目をついだばかりの龍平(りゅうへい)さんです。龍平さんは、プロのカメラマンをめざしていました。しかし、雑誌社(ざっししゃ)の就職試験(しゅうしょくしけん)を受けていた矢先、父親が急に亡(な)くなり、店の後をつがなければならなくなったのです。

「あのまま試験を受けていたら……。こんな古い写真館なんかつぎたくなかったのに」

 龍平さんがつぶやいたとき、後ろからとつぜん声がしました。

「あなた、そんなことをいって、ばちが当たりますよ」
「えっ!」

 龍平さんはふりかえって、目をぱちくりとさせました。”アンソニー”の愛称(あいしょう)でよばれている、古い箱形で、蛇腹(じゃばら)のついた、この写真館ができた時からあるカメラが、しゃべっていたのです。

「ア、アンソニーがしゃべっている……」 

 アンソニーは、龍平さんの祖父で、写真館の三代目である鉄平(てっぺい)さんが亡くなる五年ほど前から、しゃべれるようになったといいます。

 アンソニーは、写真館の後をつぐようになったいきさつを聞き、「プロのカメラマンになりたかったのに」という龍平さんをたしなめるようにいいました。

「いつかきっと、この写真館をついでよかったと思うようになりますよ。それまで、ぼくがおつきあいしましょう」

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