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5年生の今月の本


放課後の時間割 タイトル 放課後の時間割
著者 岡田 淳
出版社 偕成社
 

 小学校で図工の先生をしていたぼくは、秋のある月曜日、ながびいた職員会議がおわったあと、戸締まりをするために図工室に向かった。

 ネコのけんかに出くわしたのはそのときだ。ぼくに気づくと、二匹はあわててにげだした。そのあとに何かが落ちていた。小さな人形だった。ネコたちはこれをうばいあっていたらしい。ぼくは興味をひかれてひろいあげた。
「わっ!」

 それは白い服を着たネズミだった。

  一週間後の月曜日、明日の授業の準備を終え、帰ろうとしたときのこと。どこかで声がした。
「今日の仕事はもうおしまい、だね。」
「あの、どなたでしょうか。」
「いま、そこへいくから。」

 天井のすみにある空気抜きのふたが突然はずれて、なんとそこから白いコートを着たネズミがおりてきたのだ。 

「とりあえず、この間のお礼を……。」

 なぜネズミが人間の言葉を話すのか、おどろき、ぼう然とするぼくに、
「ごぞんじなかろうと思うが、わたしは、学校ネズミなんだ。」
と、語った。

「学校ネズミというのは、学校に住むネズミで、最大の特ちょうは、教育を受けるということだ。もっとも、それは人間の教育だから、学校ネズミは体質まで、他のネズミとはずいぶんちがってしまったのだ。」 
とそのネズミは説明してくれた。 その学校ネズミも、火事でみんな死んでしまい、のこされたのはぼくが助けた一匹だけになってしまったのだ。そのねずみがぼくにこう語った。

「学校ネズミというものはね、お話をつくったり、話したりすることが大好きなんだ。わたしの先輩たちも、みんなすぐれた語り手だった。かれらは、自分たちのお話の中で最高のものを、若いネズミに伝えて死んでいった。しかし、最後のネズミにはもう語り伝える相手がいない。そこでだ。あんたが、わたしに語り伝えられた話を聞いてくれないかな。」

 こうして、毎週月曜日、ぼくとネズミの「放課後の時間割」は始まった。

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