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5年生の今月の本


幸せの青いチリトリ タイトル 幸せの青いチリトリ
著者 山末 やすえ
出版社 文溪堂(ぶんけいどう)
 

 ミノリは最近おちこんでいる。親友のマリちゃんを、由井さんにとられそうなのだ。おもちゃじゃないから、むりやりとりかえすわけにもいかないし、
「由井さんなんか、転校してこなければよかったのよ。」
ある日のこと、ミノリは庭のウメの木に、青いプラスチックのチリトリがひっかかっているのを見つけた。まあたらしいチリトリだった。
「へんね。チリ“トリ”だから、木にとまっていたわけ?」
 ミノリは自分でいって笑った。

 見ると、そのチリトリは、へんなチリトリだった。ただの道具ではなく、まるで犬が散歩をさいそくするように、
「そうじして、そうじして。」
といっているようでほうっておけない。
 だからミノリはいつも庭そうじをした。そうじをしながら由井さんの悪口や学校であったいやなことを、チリトリに聞かせた。けれど、チリトリにお願いしたことのききめは、まだあらわれていない。きょうも、図工の時間にみじめなことがあった。二人組みになって、「友だちの顔」を描きあうことになったとき、マリちゃんはまっさきに由井さんと組んだのだ。

 由井さんがミノリをみて、「残念でした。」というように笑った。やはり、あのチリトリは、ただのプラスチックにすぎないのだろうか。

  ふと、ミノリはチリトリが自分をよんでいるような気がした。ほうりっぱなしにしていたチリトリを庭でみつけたとき、ミノリはどきっとした。チリトリがみのりを見たと思ったのだ。ミノリは、こわいようなふしぎな気もちでチリトリをみた。ぴかぴかだったチリトリは、いまやごった青になっている。どうしてだろう……。

(そりゃ、そうよ。ただのゴミだけをあつめたんじゃないもの。)そんな声がきこえた。(口からでたゴミもあつめたんですもの。)

  ミノリは、「あっ」と口をおさえた。もしかしたら、チリトリがこんなによごれたのは……。ミノリは、青いチリトリを水できれいにあらってふいた。

【 ミノリの願いはどうなったのかですって? それは読んでのお楽しみ。この本には、あわせて6つの話が集められていますが、どれも心にしみる作品です。】

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