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> 銀の馬車
タイトル | 銀の馬車 | |
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著者 | C.アドラー | |
出版社 | 金の星社 | |
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夏のあいだ、クリスと妹のジャッキーは、しずかな森の中にあるウォーレスおばあさんの家でくらすことになった。ウォーレスおばあさんに会うことはめったになかったから、ふたりとも不安でしかたなかった。おかあさんは仕事でいそがしくて、どうしてもクリスたちといっしょにいられないのだ。わかっていても、不安だった。 「あたしたちをここにおいていかないで、母さん。」 ジャッキーは泣いた。クリスだって泣きたかったけれど、泣くことができなかった。なぜって、甘えんぼうで目立ちたがりやのジャッキーのめんどうをみるのは、いつもクリスの役目だったから。 お父さんが家を出ていってからというもの、お母さんはすごく怒りっぽくなった。いつもいらいらして、ぴりぴりとクリスをしかる。お母さんは、とにかくあたしがきらいなのだ、とクリスは思っていた。お母さんが好きなのはジャッキーだけだ、ジャッキーは甘え上手でとてもかわいいから。 大人はいつでもジャッキーをかわいいと言う。ジャッキーがどんなに困ったやっかいものだとしても……そして、ジャッキーをうとましく思ってしまう自分のことも、クリスはきらいだった。クリスをあいしてくれるのは、お父さんだけだ。 お父さんがクリスをむかえに来てくれることを、クリスはいつも願っていた。お父さんは、もう1年以上家に帰ってきていない。クリスは手紙を書くことにした。そうして、これからはお父さんといっしょに暮らすのだ。 「きみはわたしの、だいじなだいじな娘(むすめ)だ、クリス。」 お父さんはきっとそう言って、クリスをつれて行ってくれるにちがいない。 ウォーレスおばあさんは、とてもやさしい人だった。クリスたちをいちごつみにつれて行き、パンやジャムの作り方を教えてくれた。そして、決して怒ったりしない。
ウォーレスおばあさんに会うことがほとんどなかったから、好きになることができなかっただけなんだとクリスは思い、おばあさんに言った。 ある時、おばあさんがクリスにたずねた。 おばあさんは言って、クリスに銀の馬車のことを教えてくれた。おばあさんの部屋にある、銀モールで作ってあるとても美しい馬車。それは魔法(まほう)の馬車で、行きたいと思ったところならどこへでも、つれて行ってくれるのだと……。 小さな銀の馬車は、魔法の馬車。クリスは魔法の馬車を使って、いろいろなところへ出かけます。けれど、魔法はいつまでもつづくわけではありません。クリスの前にはやがて、今まで気づきもしなかった現実が、すがたを見せはじめるのです……。 【 あなたは、お父さんやお母さんのことは好きですか? きょうだいは? じゃあ、自分のことは好きでしょうか? 人を理解(りかい)することは、かんたんなようで、実はものすごくむずかしいことです。クリスのように、最初はわからなかったいろんなことがわかり、見えなかったものが見えるようになると、人のことをもっと理解できるようになるのかもしれませんね。】 |