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5年生の今月の本


ボクの先生は山と川 タイトル ボクの先生は山と川
著者 矢口 高雄
出版社 白水社
 

 マンガシリーズ 『釣りキチ三平』 で知られる作者の矢口高雄さんが、少年時代をふりかえって書いた”夢と現実がいっぱいつまった”エッセイです。エッセイ第一作目 (『ボクの学校は山と川』) のテーマは、矢口さんが小・中学校時代に出会った二人の恩師をとおしてみた「学校生活」と、山里の「遊び」でした。

  今回紹介するのはその第二弾、山村のくらしや家族のことにスポットをあてた作品です。

 山里のくらし、というとなんとなくのんびりしたイメージがあるかもしれませんが、現実はとっても大変です。まだ日本全体が貧しかった時代、矢口さんの村も例外ではありませんでした。生活の基盤である「農業」にかかわる家族の苦労、四六時中働きづめのようなお母さんの苦労、おじいちゃんの苦労。もちろん友だちも苦労、先生も苦労……と、このお話に出てくる人たちはみんなものすごい苦労人ばかりです。でも、明るく元気いっぱいの主人公の目から見た村のくらしは、時に言いようもなくキラキラと光りかがやいて見えます。

●おいしい”みちくさ”
 学校帰りに”みちくさを食う”。でもただの寄り道ではありません。矢口さんは子どもの頃、本当に草を食べながら帰宅していたそうです。

  春が近づき、雪どけした田んぼの、緑のあぜ道に生えたスカンポ(スイバ) がその代表格。スカンポは生でそのまま食べられるけれど、とってもスッパイ。でも食欲おうせいな少年たちにとって、太くて水気の多いスカンポは立派なごちそうです。家から持ってきた荒塩を、ちょっとまぶしてはシャリシャリシャリ。

  ほかにおすすめの”みちくさ”は、イタドリ、山ツツジ、カゴ(桑の実)。カゴはぶどうに匹敵するほど甘いので、子どもたちの大好物。でも、とるのはちょっと大変で……。

●吹雪ばんざい!
 ある冬のこと。前も見えないほどの猛吹雪のなか、一人で下校途中の主人公がさしかかったのは、死者も出たことのあるがけ道。ちょっとでもゆだんすると風に飛ばされそうな恐ろしさをこらえて進んでいたそのとき、ふいに頭の上で
「ギャーッ!」 
という叫び声がしたではありませんか。その声におどろいて、主人公もおもわず
「わっ!!」
すると、やおら目の前を横切った黒い影が、前方の雪の斜面にズボッと吸い込まれていくのが見えました。少年は思います。

  もしかして……?

【 「農業」、「山村でのくらし」、それらについてぼんやりしたイメージしか浮かばないという人は、ぜひこの本を読んでみてください。家族、友だち、先生一人ひとりの思いや生きざまが愛情たっぷりに描かれた、一度よんだら忘れられない作品です。】

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