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5年生の今月の本


火のくつと風のサンダル タイトル 火のくつと風のサンダル
著者 ウルズラ・ウェルフェル
出版社 学習研究社
 

 チムは自分のことが大きらいでした。だって、チムは学校一小さくて学校一太っていたからです。みんながチムのことをからかうたびに、チムは悲しくなるのでした。そんなチムが7才の誕生日をむかえた日の朝、台所のテーブルの上にあったのは、ろうそくに火のついたケーキと二足のクツ。一つは小さくて、もうひとつは大きい新品のクツでした。

 そのとき、お父さんが大きな声で言いました。 

「夏休みになったら、このあたらしいくつをはき、このすばらしいリュックサックをしょって、ふたりで、ひろい世界へでかけることにしよう。」

 そうして旅の間じゅう、二人はお互いを 「火のくつチム」、「風のサンダル」 と呼び合うことにし、やさしいお母さんを残して四週間の冒険に出かけます。

  高い山めざして歩いていた時のことです。二人は急な流れの川にぶつかりました。川には幅の狭い(せまい)一枚の板が渡し(わたし)てあるだけです。チムは急に不安になりました。川の深さはどのくらい?手すりもない。ぼくが重すぎて板がわれたら――?

「風のサンダルさん、ぼくに手をかしてよ!」
でも、お父さんはしらん顔でさっさと行ってしまいます。チムは勇気を出して走り出しました。
「それっ!」
――ドボン! 残念、チムは水の中にしりもちをついてずぶぬれになってしまいました。それを見たお父さんは大笑いでこんな話をするのです。

「むかしむかし、たいへんなとしよりのさかながいた。」 
陸に上ったこともあるかしこいその魚は、とうとう125才になりました。けれども、
「きゅうなながれにさんぽにでかけたときに、小さな男の子が、さかなの上にしりもちをついたんだ。さかなはショックで死んでしまった。」 
「ちがうよ!」
とチムは叫びましたが、顔は笑っていました。

 ある農家に泊まった時のことです。子供たちに「でぶだ」、とからかわれたチムはすっかり落ち込んでしまいます。 

(ぼくはどうしてこんなにみっともなく見えるんだろう。)

 するとお父さんが大きな声で言いました。 
「おまえは、チムのように見える。世界じゅうに、火のくつチムは、たったひとりしかいやしない。」
「たったひとりしかいやしない。」 

  それでも落ちこむチムに、お父さんはこんな話を始めました。それは「黒いひつじの話」……。

【 この作品は、1962年にドイツ優良児童図書賞を受賞しました。いつも世界にたった一つしかないステキな話で、チムの一番知りたいこと、言ってほしいことを教えてくれるお父さん。子供への深い思いやりとお父さんへの信頼が、あたたかいユーモアで描かれています。

  ところで、クツ屋のお父さんは家で仕事をしていますが、みなさんの場合、いつもいそがしいお父さんやお母さんとゆっくり話をすることって、なかなか難しいですよね。そんな人は、お休みの日にお父さんやお母さんと一緒にどこかに出かけてみてはどうですか?そして、なにかお話、ねだってみましょうよ。】

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