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5年生の今月の本


宿題ひきうけ株式会社 タイトル 宿題ひきうけ株式会社
著者 古田 足日
出版社 理論社
 

 〈みなさんにとって切ってもきりはなせないもの、それは宿題。さて、それではみなさんにとって宿題とは?なんで宿題が出るんでしょう。どうして毎日宿題をしなきゃいけないんでしょう。なんのために?だれのために?〉

……とある小学生6人が会社を作った。「宿題ひきうけ株式会社」 ここでは宿題は宿題でなく、りっぱな“しごと”である。五人の社員は、クラスの友だちから“注文”をあつめ、彼らの宿題をひきうけるかわりに代金をうけとる。

「社長」 のタケシがこの会社をはじめようと思ったのは、アキコの兄の同級生、テルが一千万円のけいやく金でプロ野球選手になったというはなしを聞いたからだ。テルは小学生のころから、勉強はぜんぜんしないかわりに野球ばかりやっていた。それなのに今では「一千万」 ももらえる時の人だ。

 アキコがつぶやいた。
「わたし、なんだか宿題やる気しないわ。」
「勉強するのが、まるで馬鹿みたいだわ」

 小学校のときから毎日いっしょうけんめい勉強して大学にいっても、プロ野球選手とくらべたらもらえるお金はほんのわずかだけ。

  勉強のよくできるアキコは、家族の期待を一身にうけていた。
「アキコは勉強してればいいわ。台所しごとなんか、わたしがやるから」
「おまえは将来、東大へ行くんだから、もっと勉強しなくちゃだめだぞ」

  でも、アキコにはわからなくなっていた。アキコの耳にはお母さんのこんな言葉が聞こえてくる。
「――お金、お金、どこへいってもお金が足りないわ。」

 お母さんはいつもいつもお金が足りないと言っている。そう、お金が足りないのだ。

「勉強するのが、まるで馬鹿みたいだわ」

……。さて、そのころほかの「社員」たちは宿題の注文あつめに必死だった。
「いやだよ、そんなこと。宿題は自分でやらなくっちゃ」
「じゃ、きみはいままで宿題を全部自分でやってきたかい。おとうさんやおかあさんにてつだってもらったろう。第一、ときどきやってこないじゃないか」 
「勉強は自分の力をつけるためのものさ。家庭教師におそわるのと、答をまるうつしにしていくんじゃ、まるっきりちがうんだ」

  これを聞いたサブローは言った。でもぜんぜん勉強せずプロ野球選手になったテルちゃんはどうなんだよ?勉強はぼくらの将来にとって、そんなに大事なことなの?そんなふうに思ったのかもしれない。するとこういう返事がかえってきた。
「あいつは特殊(とくしゅ)な才能があったというわけだ。おれたちはそうじゃない。勉強して、いい学校にはいるよりほか、手はないんだ。」

 それでも納得のいかないタケシは、せっせと友だちの宿題をひきうけてあげるのですが……?

【 「自分の力」 をつけるのも、けっきょくは “一千万” をめざすため?それならタケシたちがお金をかせぎながら勉強もし、勉強よりもほかのことで自分の才能をのばしたいと思っているほかの友だちを助けることは、わるいことと言い切れるの? もちろんお金は大切です。でも、勉強することの意味はほんとうにそれだけなの? みなさんにはもう答えがわかっているでしょうか?】

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