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5年生の今月の本


チョコレート戦争 タイトル チョコレート戦争
著者 大石 真
出版社 理論社
 

 みなさん、これは 「わたし」 がある小学校の先生をしている友人からきいた話です。それがあんまりおもしろかったので、「わたし」はさっそく本にまとめてみました。

……S市というところにあるその町には、とても有名な洋菓子(ようがし)屋さんがありました。名前を 「金泉堂(きんせんどう)」 というその店でとくに有名なのは、ショートケーキやエクレールなどのフランス菓子です。どれも舌がとけそうなほどおいしいので、この町の人たちはみんな、「こんなうまい洋菓子は、東京だってめったに買えるもんじゃござんせん」 、そう言って 「金泉堂」 のことをじまんするのです。

 さて、そんな「金泉堂」 のお菓子ですから、とうぜん子どもたちにも大人気です。子どもたちにとってここのお菓子をいくつ食べたかはじまんの種でしたし、
「もし、やくそくをやぶったら、金泉堂だよ」 
ということばが、彼らのあいだで流行語(りゅうこうご)になるほどでした。また、おかあさんは勉強の苦手な子どもに、
「こんど、百点をとったら、金泉堂の洋菓子を買ってあげますからね」 
といってはげますのでした。そのくらい 「金泉堂」 の洋菓子はほんとにほんとにおいしかったのです。

 ただ、この洋菓子にもひとつだけ大きな欠点ありました。それはねだんがすばらしく高かったことです。そのおかげでめったに食べられない 「金泉堂」 のケーキは、いよいよ子どもたちのあこがれになるのでした。

 さて、そんなある日のこと。熱をだした妹を元気づけようと 「金泉堂」 のシュークリームを買いにきた光一(こういち)と友だちの明(あきら)は、店の外のショーウインドーにかざってあるチョコレートの城に見とれていました。
「クリームでふちどりした窓、ウエハースの屋根、赤いジュエリーの塔、角ざとうのレンガ……」
秋の日をあびてきらきら光るりっぱなチョコレートのお城は、「金泉堂」 のシンボルでした。光一と明がおもわずため息をもらしたそのとき、ふいに 「パシッ」 とするどい音がしたではありませんか。するとつぎの瞬間(しゅんかん)なんと、二人の目の前のウインドーガラスが音を立ててくだけちったのです。

「にげるんだ!」 
 とつぜんの出来事におもわずその場から走りさろうとした二人の肩を、うしろからつかむ人がいました。それはほかでもない、怒りにふるえる 「金泉堂」 の店員でした。ふたりはそのまま店の裏口にひっぱられ、エレベーターで三階へと連れて行かれました。そこにいたのは 「金泉堂」 の主人、谷川金兵衛(きんえべ)。

 金兵衛はいいました。
「人間だれしも、悪いことをしたときは、それをかくそうとするものじゃ。ほんとうのことをいうには、大きな勇気がいる。だが、男子たるものは、その勇気あるおこないをすべきものじゃ……」 
「ぼくたちは、けっして、ガラスをわったりなんかしません。何十回きかれたって、答えはおなじです」 
「それを、そのまま、信用するわけには、いかないのじゃよ」 
(まってくれ、僕たちはなにも悪いことなんかしていない!)

 かってに犯人あつかいされた二人がどんな気持ちだったか、みなさんにも想像できることでしょう。でもこのままで終わる二人ではありません、光一にはある考えがひらめいていたのです……。

【 さてさて、町いちばんの人気洋菓子屋「金泉堂」 対、無実の子どもたち。それぞれの名誉(めいよ)をかけた 「チョコレート戦争」 がはじまります。さいごに勝つのは子どもたち?それとも大人たち? いっきに読めるたのしいお話です。】

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