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> ベンガル虎の少年は……
タイトル | ベンガル虎の少年は…… | |
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著者 | 斉藤 洋 | |
出版社 | あかね書房 | |
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ある日、とつぜんに父さんがいいました。 ベンガル虎の少年は、それをきいてとてもビックリしました。とうとうその日がきたのです。 ベンガル虎の一族は、赤ちゃんが生まれても、男の子だったらすぐには名前をつけません。少年になってしばらくしてから、名前がつけられるのです。でも、その前に、旅に出なければなりません。旅に出て、広い世界をよく見聞きしてからでないと、一人前だとはみとめてもらえないのです。少年は、自分にもついに旅立ちのときがきたのをさとりました。 さて、息子の出発にあたって父さんのロビバルから 「ベンガル虎のこころえ」 が伝えられました。 旅立ちの儀式(ぎしき)がぶじにすむと、さいごに父さんはいかにももったいぶった感じで威厳(いげん)たっぷりに、こんなことを注意しました。世界じゅうで一番危険な動物は人間である。とくにおとなの人間はひじょうに危ない。ただし、老人と子どもは別である。なぜなら、老人と子どもには虎の言葉がわかるから。 少年は暗い夜道を歩きながら、「人間」 について考えました。人間はおくびょうだけど、なにをするかわからないときがあるからこわいのだ、と父さんは言っていました。 ……そんなことを思ったときです。少年は、以前、父さんから虎になった 「リチョウ」 という人間の話を聞いたことを思い出しました。人間の世界でえらくなれなかったのがくやしくて、くやしさのあまり虎に変身してしまった 「リチョウ」 は、人間でも虎でもおかまいなしにおそいかかる、すさまじく凶暴(きょうぼう)な虎だということでした。暗い森の中を一人ぼっちで歩いていると、いつ 「リチョウ」 が飛び出してきはしないだろうかと不安になってきます。そのときでした。ガサリ。ガサリ、ガサリ。……やぶをゆらして、向こうから何かがやってくるのがわかりました。 「あの木のゆれ方は大きな動物だ。人間かな。いや、ちがう。」 もしかして 「リチョウ」? ――少年は、胸をどぎまぎさせながら身がまえました……。 【 ひょんなことから旅の行き先を 「中国」 にえらんでしまったベンガル虎の少年は、いくつもの山脈を越えて、はるか北の国、まだ見ぬ中国をめざしてひたすら歩き続けます。行く先々で出会ったのは、虎の言葉がわかる人間の女の子、ベンガル虎を山より大きいと思っている早とちりのアモイ虎、威勢(いせい)はいいけどそよ風みたいな雷しか落とせない子どもの竜……。おもしろい話を求めて中国にやってきた少年ですが、はたしてその願いはかなえられるのでしょうか。ゆかいでふしぎな少年虎の物語がはじまります。 |