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> 緑の石食い虫
タイトル | 緑の石食い虫 | |
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著者 | ベルンハルト・クナーベ | |
出版社 | 西村書店 | |
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ホルバイン・ギムナジウム(ドイツの寄宿学校)に通う11才のベルンハルト少年は、頭を抱えていました。なぜかって? それは国語(ドイツ語)の時間に出された作文の宿題が、ちっとも先へ進まなかったから! ミューラー先生は言いました。「わたしたちのトクベツな体験」 について教えてくださいね、と。でもいったい全体何について書いたらいいんだろう! そんなとき、ふとベルンハルトの頭にうかんだのはおとうさんの書斎(しょさい)でした。 民族(みんぞく)学者のおとうさんの書斎には、めずらしい標本(ひょうほん)や古代の壺(つぼ)や、砂漠(さばく)で見つけたふしぎな石や、いつもおもしろそうなものがたくさんならんでいます。それらはみんなベルンハルトのおとうさんが探検から持ち帰ったものでした。あの部屋に行って、作文のネタになりそうなものを探してみよう! そう思った少年でしたが……「それ」 は、ベルンハルトが学校で授業を受けている間に、しずかに、でも確実(かくじつ)に進行していたのです。 「はじめは、空耳かと思った……だが、ちがう。なにかがガリガリ、ポリポリ、ガリガリ、ポリポリやっている……。びっくりして身をひいた。壁のすきまをにらむ。胃袋がぎゅっとちぢこまった。」 「その瞬間だ。二秒もないほどだったけれど、小さな緑色の虫の頭が針の先ほどのすきまから、ちらりとのぞいて、すぐまた壁のなかにひっこんだ。」 その時になってはじめて、ベルンハルト少年は気がついたのでした。(あれは昨日おとうさんの書斎から逃がしてしまった 「あいつ」 だ。ガラス戸のなかに、ビニール袋につつまれておいてあった黄色い土くれのなかに、あいつはいた……パパが古代文字を使って書いたメモにはこうあった。《緑の石食い虫、警告、開封厳禁(かいふうげんきん)》---!) ポロポロと白いしっくいのかけらを降らす教室の天井が音を立ててくずれるのに、それからそう時間はかかりませんでした。「逃げろ!学校がこわれるぞ!」 どうしていいかわからなくなった先生たちにまじって、生徒も先生もみんな必死で校舎の外へと飛び出します。翌日の新聞にはこう書いてありました。「千二百人の生徒が危険にさらされる。教室が崩壊(ほうかい)」 でも、被害はそれだけではすまなかったのです。市営プール、タワーホテル、博物館、そして刑務所までもが小さな小さな 「緑の石食い虫」 たちのえじきにされていくのです。さて、街はいったいどうなってしまうのでしょうか? 【 この物語の作者と主人公が同じベルンハルトという名前なのはどうしてかというと、はじめに書いたとおり、このお話が本当に学校の作文から出来上がったものだからなのです。当時、まだ11才だった作者がけっして好きとはいえない作文にとりくむうちに生まれたのが、この『緑の石食い虫』 なのです。石造りのドイツの古都・アウグスブルクを舞台にくり広げられる奇想天外なお話です。ぜひ読んでみてください。】 |