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5年生の今月の本


うっほほーいの話 タイトル うっほほーいの話
著者 田中 てるみ
出版社 アリス館
 

 風がとろとろ流れていきます。まるで、いねむりしているみたいな風です。いねむり風にさそわれて小さなあくびをしながら、うっほほーいは、今日はたねをまこうか、と思いました。のんびりと風のふく日は、絶好のたねまき日和なのです。こんな日に、畑にまかれた野菜のたねは、たくさんたくさん、あくびをしながら大きくなるといいます。あくびをするたびに、おひさまの光や土の栄養をたっぷりとすいこんで、おいしい野菜に育つといいます。

 うっほほーいは、春の陽のエネルギーをたっぷりとたくわえた畑に、ころんころんとしたまんまるな豆、グリーンビーンズをまくことにしました。そのとき、森の方からうっほほーいをよぶ声がしました。
「やあ、チイミーだ。いらっしゃい、チイミー!」

  うっほほーいの親友であるチイミーは、冬のはじめに生まれたばかりの、まだ幼いモコモコです。野原をころがるまるいからだは、真っ白な毛におおわれ、雪のかたまりのようにもみえます。冬の間は景色にまぎれたそのすがたも、春の緑の芽ぶきのなかでは、不思議なほどに目立ちました。

 今日、ひさしぶりにチイミーがあらわれたのは、お別れをいうためだということが、うっほほーいにはわかっていました。モコモコは、厳しい寒さに強く、かわりに暑さには弱い動物でした。雪がとけるころには「夏ごもり」のしたくをはじめます。地下の家をすずしくととのえ、秋までぐっすりねむるのです。

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