あたしは中学１年生。小さいころは、お姉ちゃんと、いとこの高志（たかし）くん・真（しん）ちゃんと、幼なじみのテツと、いっしょによく遊んでいた。でも、高志くんが東京の大学に進学して、お姉ちゃんは地元の私立中学校に進学して、真ちゃんはアルバイトをするようになって、みんながバラバラになってしまったのを感じる。あたしが大好きな真ちゃんは、かみの毛を金色にそめていて、高校にも行っていないから、お姉ちゃんやお母さんは真ちゃんを不良あつかいする。ほんとは、真ちゃんはやさしい人なのに……。

　 真ちゃんちのおじちゃんとおばちゃんが離婚するらしいと知ってショックを受けていた時、真ちゃんから「新宿にひっこす」と聞かされて、あたしはさらにショックを受けた。バンド活動をしている真ちゃんは、新宿で歌をうたいたいらしい。もっともっとたくさんの人に、自分の歌をきいてもらいたいらしい。

　 真ちゃんが新宿に行く前日。前からの約束通り、真ちゃんは海につれていってくれた。真ちゃんは、歌をうたっている時が何よりも最高で、生きていると実感できると言った。真ちゃんの歌をきいた人が、悩みも忘れてスカーッといい気分になってくれることが、自分の夢なのだと。