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タイトル | ねこになった少年 | |
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著者 | 征矢 清 | |
出版社 | 岩波書店 | |
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夏休みも近いある夕方。13歳(さい)のぼくは、道ばたで絵を売っているフランス人の青年から魔法(まほう)の眼鏡(めがね)を買った。その眼鏡をかけたとたん、体がゆれ始め――ぼくは灰(はい)色のねこになってパリの街にいた。この街のことはもちろん知らないし、自分が何者で、どこから来たのかもわからなくなっていた。やさしそうな人間を見つけてすり寄っていくと、ソーセージとミルクにありつけた。だが、その絵描(か)きは貧しく、ぼくを飼うことはできないようだった。ぼくは街角にある廃墟(はいきょ)に置いていかれた。 誰もいないと思ったその廃墟は、のらねこたちのかくれ家だった。ここを住みかにしていることを人間に知られないよう、ねこたちはグループの掟(おきて)をつくってそれを守っていた。よそ者のぼくが仲間に入れてもらうには、きびしいテストに合格しなければならない。何度もくじけそうになりながら、ぼくはテストに合格した。 ねこたちの中に、1匹(ぴき)だけ特別なねこがいた。白ねこ のセシルだ。みんな自分の食べるものは自分でとって くるのに、セシルだけは廃墟の奥(おく)から出ようとしない。 外に出ると、どこか遠くから「何かこわいもの」が押(お) し寄せてくると言うのだ。 このグループの狭(せま)い世界からぬけろ、とぼくに忠告(ちゅうこく) するねこもいた。だがセシルがいる限り、ぼくはここ に残りたかった。そんなとき、大通りでデモをしてい た人たちと警備(けいび)隊がぶつかり、廃墟の中に人間がなだれを打ってころがりこんでくる。かくれ家はめちゃめ ちゃにされ、たくさんのねこが死んだ。ぼくはセシルを連れて逃(に)げた。セシルが言った通り、遠くから何か が押し寄せてくるのを感じる。ひげの先からしっぽの先へ体をつらぬいていく強い恐怖(きょうふ)が、空気の中に満ちている。 だが、人間の子どもに追っかけられて、セシルとぼくは別れ別れに。セシルを探(さが)すうち、ぼくは賢(かしこ)そうなきじねこに声をかけられた。ぼくが新聞を読めると知ると、きじねこはぼくを秘密(ひみつ)の場所へ連れて行った。世界じゅうからねこの魂(たましい)が集まるというその不思議な場所には、ミイラのような賢者(けんじゃ)ラビがいた。ラビはぼくが来ることを知っていた。そして、遠い島で起こった恐(おそ)ろしいことも……。 ラビは言った。 【 ねこたちが感じた恐怖、それは南太平洋でフランスが行った水爆(すいばく)実験でした。この本を読んで、きみもどうかこの「魔法の眼鏡」をかけてください。そして、人類がこの地球に生き続けるためにはどうしたらいいかを人間にもどった「ぼく」と一緒に考えてください。】 |