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> ザリガニ同盟
タイトル | ザリガニ同盟 | |
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著者 | 今村 葦子 | |
出版社 | 学習研究社 | |
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5年生になって、ついにめぐりあったビッグ・チャンス。ああ! 小さいときから何度、ぼくはこの池で、だれかがザリガニをつかまえるのを見て、くやしい思いをしてきただろう! だけどこんどこそは、ぼくの番だ。あの池には、ザリガニの数よりも、ザリガニをねらう子どもの数の方が何十倍も多い。だから、ザリガニをつかまえるのは大変なことだなんだ。しかも、ぼくが見つけたのは池の主のような大物だった。 親友のカッペイといっしょに、必死になって走り、家へもどった。ザリガニをつかまえ、飼うために必要なものをそろえるためだ。 「まだいるかな」 「ザリガニつりか?」 「な……おねがいだ。あれを見のがしてやってはもらえまいか。あれはわたしのなかまなんだ」 ぼくは、まじまじと、じいさんを見つめて、ばっかじゃないだろうかと思った。わたしとあれだって? たったひとつの楽しみだって? とても正気とは思えなかった。この池のザリガニは、つかまえた者のものなんだ。早い者のかちなんだ。それがルールだった。それが、あんなへんなじいさんのために、チャンスをとりにがすだなんて……。 ぼくとカッペイは、帰ったふりをし、じいさんがいなくなってからザリガニをとった。ザリガニは、見たこともないような大物だった。帰り道、ぼくらはほとんどしゃべらなかった。なぜだか、ひどく腹(はら)が立つような、ひどくがっかりしたような気がしていた。 ぼくは、そのザリガニを<帝王(ていおう)>と名づけた。近くで見ると、それはザリガニではなく、古代の怪獣(かいじゅう)のようだった。水槽(すいそう)に顔を近づけて、まじまじと見る。すると、ぼくの帝王は、太古の世界を支配する巨大(きょだい)な王者になった。しかし、いったん帝王のそばをはなれると、心に雑音がまじるのだった。あのじいさんの声が聞こえてくる……。 【 きっとみなさんは、「ザリガニを池にかえすにちがいない」と思うでしょうね。そのとおり。じいさんは大変に喜び、ザリガニの池の秘密(ひみつ)を教えてくれます。そして、じいさんと三人で「ザリガニ同盟」を結成します。そのとき、じいさんの命はあとわずかしか残っていませんでした。】 |