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> ブンナよ木からおりてこい
タイトル | ブンナよ木からおりてこい | |
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著者 | 水上 勉 | |
出版社 | 新潮社 | |
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トノサマガエルのブンナが沼に住むほかのカエルたちとちがうのは、跳躍(ちょうやく)が得意なうえ、木にのぼれることでした。ブンナはひまがあると沼の近くのしいの木にのぼって、遠い景色を見ました。天敵(てんてき)のヘビがやってくると、いち早く発見し、きけんを知らせました。ブンナはみんなから、尊敬されました。 しかし、ブンナはいつも高いところから周囲を見ているうちに、仲間のカエルたちが土にへばりついていて、貧相(ひんそう)なもののように思えてきました。それに比べて自分はスマートで、健康で、力があるように思うようになりました。いつの間にか、仲間のカエルたちを見下すようになったのです。 ある日のこと、ブンナは、10メートルほどもある高いしいの木のてっぺんにのぼることを決心しました。 しいの木は、折れたところに穴があき、そこにいろいろなものがつまって土となり、草まで生えていました。 羽のつけねを折られたすずめ、半殺しの目にあったもず、せなかを穴だらけにされたねずみ、口をやられ片目もさかれたへび、30メートルの空中からたたき落とされた牛がえるなど、きずつき弱った動物たちが次々と運びこまれては、1匹1匹と鳶(とび)に連れ去られていきます。 ブンナはかわいそうに思うのですが、きずついてはいても、日ごろ天敵(てんてき)のような存在であった動物たちですから、土の中から出るに出られません。 ブンナは土の中で、いまわのきわをむかえた動物たちが、死を目前にした心境(しんきょう)を語り合うのを、また、鳶に連れ去られて殺されることになる動物たちが悲痛(ひつう)な声をあげて命ごいをするのを、ただじっと聞いているしかありません。その体験は、ブンナを大きく変えることになります。生きるということは、いったいどういうことなのだろう。どんな動物にも、同じような心というものがあるんだ……。 【 以前、安田女子中などいくつかの中学校の入試で、素材文に使われたことがあります。なかなか読みごたえがあり、おかあさんにもおすすめです。巻末の「母たちへの一文」は、作者水上勉さんからおかあさんたちへのメッセージです。どうぞお読みください。】 |