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6年生の今月の本


12歳 いつもとちがう夏休み タイトル 12歳 いつもとちがう夏休み
著者 塩沢 千絵
出版社 旺文社
 

 あたし、ああいうなんじゃくなタイプってだめなのよお。やっぱり男の子は小麦色の肌(はだ)じゃなくちゃね」
 あこがれていたカナちゃんが、ぼくのことをそんな風に思っていたなんて――。

 あしたから夏休みだというのに、ぼくの気分はとことん落ちこんだ。ただでさえ今年の夏休みはいつもとちがう。おかあさんがスーパーのくじびきで当てたアメリカ旅行に行ってしまい、おとうさんは九州へ出張。ぼくは、顔も思い出せない千葉のおじさんの家へあずけられることになったのだ。
 だが千葉の海辺の町に着いた早々、はでなアロハシャツの三人組がからんできた。色が白く、弱そうで、土地カンがなさそうなぼくに目をつけたらしい。「十二歳の少年、暴行(ぼうこう)をうけ重体!」という新聞の見出しが、ぼくの頭にぱっぱっと浮かんだ。

 その時である。
「やめなっ!」 という声とともに、一人の人魚が――いや人魚のような少女があらわれたのだ。
「ヤバイ。こいつミドリだ」
「なんだよ、たかが、女に」
「ただの女じゃないっすよお。ほら例の早川の……」
「えっ。あの、ミドリか」
 ごちょごちょと話し合っていた三人は、捨てゼリフを残して、何と逃(に)げ出してしまったのである。ミドリと呼ばれたこの人魚、いったい何ものなんだ……? 人魚が、ぼくにとって気になる存在になってしまったのは、この時からだ。
 おじさんの家へ着いてみると、おじさんはよっぱらって寝(ね)ていた。そこへ、わがもの顔に勝手にあがりこんできた者がいる。おじさんの作るウキの愛好家(あいこうか)だと言うハチマキおやじだ。聞けばおじさんの奥さんは、おじさんにあいそをつかして実家へ帰ったらしい。あまりのことにぼくはめまいがしてきた。

 ハチマキおやじは、毎晩(まいばん)とれたての魚を持ってきて、魚がきらいなぼくに「そら食え!」とせまるし、おじさんは変人だし、ぼくの毎日は悲惨(ひさん)そのもの。そんな時、ぼくはとても意外なところで、あの人魚ミドリと再会することになる――。

【 色白で都会っ子のぼくが、漁師の町でだんだんきたえられ、印象深い夏休みを送る楽しい物語。】

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