トップページ > 読書案内 >  6年生の今月の本 > 6年生におすすめの本
 > 車いすにのったアーサー王

6年生の今月の本


車いすにのったアーサー王 タイトル 車いすにのったアーサー王
著者 クリア・べヴァン
出版社 文研出版
 

 ミルナー先生が学校の授業で『アーサー王と円卓(えんたく)の騎士(きし)の物語』の話をしてくれなかったら、うちのねこにペンドラゴンなんて名前はつけなかったろう。
 このごろミルナー先生は、少しずつ『アーサー王と円卓の騎士の物語』を授業で読んでくれていた。
 先生は昔かたぎの先生で、コンピュータとか新しい電気装置には弱いけれど、ぼくらにはすごくおだやかで忍耐強い。それにおもしろい話をうんとしてくれる。

 ぼくなんか、先生のクラスに入る前は、おっそろしくだらしがなかった。教科書はだれかがロード・ローラーでつぶしたみたいだし、書いた字はスプレーでもようをかいたみたいにページの外にとびちっていた。もちろん、それは主として、ぼくがもっときちんと書こうと努力しなかったせいだけれど、ほかにもいいわけすることはある。

 ぼくは車いすで生活している。手が重たい車いすをおすのになれてしまうと、ペンを持ったとき、空気ドリルをにぎったみたいにふるえてしまうので、きれいな字でほめてもらおうと思うと、悲しい結果になる。他の先生は小言をいったり、タイプライターを使えと言ったりするが、ミルナー先生だけはなんとか困難を克服(こくふく)する方法はないかと考えてくれた。特別製の鉛筆や、輪ゴムを巻きつけたペンとか。そういうものをつぎつぎだして、使ってごらんといった。
 そんなわけで、ぼくとしても少しは努力しなくてはと思ったのだ。

 うちのねこにペンドラゴンという名前をつけた日の夕方、ぼくは先生をおどろかせたくていっしょうけんめい宿題にとりくんだ。
 ぼくはアーサー王の話を書くことにした。題材を決めるまでは苦労したけど、書きはじめたら急にのってきた。そして、ぼくは宿題の最後にこう書いた。アーサー王がぼくの英雄なのは、ぼくもアーサー王と同じように養子だからじゃないだろうかって。
 書き終わった後、なにを書いたかよく考えた。みんなほんとうのことだ。両親や兄は髪の毛が黒い。でも、ぼくはネズミみたいなうす茶色で、皮膚が白くてそばかすだらけ。
 たしかにまちがいない。ぼくは明らかに家族とちがっている。きっと親なし子なんだ。だれか知らないけれど、うちの両親に秘密を守るから助けてくださいっていって、すてた子どもなんだ。

 ぼくはアーサー王に似ているっていうこの話を学校ですると、みんなぼくにこういうんだ。
「どうかしているんじゃないの。」
 みんなも両親が本当は自分の両親じゃなくて、ポップスターやスパイだったんじゃないかって思ったことがあるんだって。
 だけど、学校が終わったらみんなでなかよく円卓の騎士ごっこをやることになった。村の池を魔法の湖にして、ピクニック用ベンチを円卓にして。

【 『アーサー王と円卓の騎士』とは、イギリスを中心としたヨーロッパの古い伝説です。名剣エクスカリバーの名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。知らなくても物語の中でもていねいにあらすじが紹介されています。
 また、主人公のアダムは車いすに乗っていますが、だれもそれを理由にいじめたりなんてしません。普通にそういった個性のある人として接します。そんなクラスメイトとの円卓の騎士ごっこがやがて大冒険へとひろがっていく様を楽しんでください。】

Page Top