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6年生の今月の本


氷石 タイトル 氷石
著者 久保田 香里
出版社 くもん出版
 

 天平九年、奈良時代のこと。

 千広は、河原の石を拾ってきては、「疫病に効く」「熱も下がる」といって売っていた。千広には父も母もない。だから、生活費を稼ぐためにそのようなことをしていたのだった。

 都には疫病が流行り、身分の高いものも低いものもばたばたと死んでいった。

 だから千広の商売もうまくいっていた。

 しかし、通りすがりの法師に、嘘をみやぶられた。そして、店先で石を見ていた女の子もそれを聞いていた。

「――うそなんだ」

 次の日、石を売った相手から、石の守りのかいもなく娘が死んだとののしられた千広は市から逃げ、小さな社にかけこんだ。すると、昨日、うそなんだとつぶやいた女の子、宿奈(すくな)もついてきた。その子は千広の売っていたまっ白な部分がある石を欲しがった。

「疫病に効くとか大神のご加護とか、全部、空言(そらごと:うそ)なんだぜ」

「知ってる。それでもかまわない。つるつるしていてまるで水晶みたいでしょう?」

  宿奈は水晶が氷石とも呼ばれると話した。

 千広は宿奈にただでその石をやった。

 文字が書ける千広は今度はまじないの木札を売る仕事に手を出した。木札は石よりもよく売れた。

 貴族の家で働いている宿奈は疫病にかかった主人のために、疫病に効果があるという水をくみに行った。千広はそれを手伝ってやるが、その日以来、千広は宿奈の姿を見なくなった。

【 遣唐使船、施薬院、木札(現代でいう木簡のこと)……、その他、奈良時代好きなら思わずニヤリとしてしまうような物が見事に一つの物語の中に描かれています。

 2010年は奈良遷都1300年。奈良時代についてよく知っている人も知らない人もこれを機会に読んでみてはいかがでしょうか。】

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