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6年生の今月の本


ねこまの月船 タイトル ねこまの月船
著者 横山 充男
出版社 PHP研究所
 

 夏休みまであと一週間。――というのに、和馬のクラスはテストだった。

(まったくシンジラレネーッ)

 和馬がため息をついて、窓の外を見ていたとき、下の三年の教室から
「先生、ネコー」
とさけぶ声が聞こえてきた。一匹のねこが、全速力でグランドを走りぬけていった。こげ茶いろのそのねこは、行方のわからなくなった和馬の飼いねこに似ていた。

(……ミーヤのはずがないよな)

 そのねこは、ミーヤとは似てもにつかぬほど動作が俊敏だった。テストに身の入らない和馬の目に、今度はねこを追って走る三人の男が見えた。

 再びねこはグランドに現れると、ふさがっている西の通用門めがけて走っていったかと思うと、フェンスにぽおんとジャンプして、消え去った。その瞬間、ねこは和馬をふり向き、にやっとわらった、気がした。たしかに、ひげをくっとあげて、白い牙を見せた。

 それから、和馬はつぎつぎと奇怪なできごとにまきこまれていく。豊玉神社の賽銭箱の前で、鈴を鳴らそうとした瞬間、頭上から大きな鈴が和馬めがけてどすんと落ちてきた。家に帰る途中、突然エンジンの音がすると思ったら、ラジコンの飛行機が和馬をめざして飛んできて、ブロック塀に激突した。その時、間一髪のところで現れて危機を救ってくれたのは、いずれもこげ茶いろの影。そう、ミーヤによく似た、あのねこだった。

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