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6年生の今月の本


大草原のちいさなオオカミ タイトル 大草原のちいさなオオカミ
著者 姜戎
出版社 講談社
 

 オオカミってやつは、頭がよくて悪知恵がはたらくけど、ツメが甘くてマヌケな生き物。……北京にいたころ、ぼくはそう思っていた。

 ところが、草原の古老から聞いたオオカミの話は、絵本で読んでいたオオカミたちとはまるでちがっていた。

 オオカミって、なんて賢くて、絆(きずな)がかたくて、崇高(すうこう)な生き物なんだろう……!

 知れば知るほど、ぼくはオオカミのことをもっと知りたくなる。

 北京の学生だったぼくがモンゴル高原に下放(文化大革命の際、学生が地方の農村に送られた政策)されたのは、二年前のこと。草原に来てからはじめの一年は、草原の長老ビリグじいさんのパオに住んでいた。ぼくはビリグじいさんのことを父とも慕っている。

「父さん。あの話、してください。『飛ぶオオカミ』の話。」
 ビリグじいさんのパオを出てからも、ぼくはビリグじいさんのパオにオオカミの話を聞きに行った。

 ビリグじいさんは、
「またか。チェンジェンは、ほんとうにあの話が好きだなぁ。」
と、苦笑しながらも、リクエストに応じてくれた。

 オオカミが協力しながら、遊牧民の羊を襲(おそ)う話。すっかりそらんじられるほどに何度も聞いているはずなのに、話してもらうたびに胸が高鳴る。

 ビリグじいさんのいうとおりかもしれない。

 ――ぼくは、すっかりオオカミにとりつかれている。

 だが、オオカミを知るのは簡単なことではない。驚かされることばかりだし、ろくに観察もさせてくれない。

(いったい、どうやったらオオカミをもっと知ることができるんだろう。)

 ミルク茶を飲みながら、ぼんやりと考えていると、ふと、ある考えが、電光のように心のなかをよぎった。

【 自分とは違うものを知る。それはオオカミのことだけではなく、モンゴルの人や文化のことでもあり、そして、私たちがこれから出会うだろう、まったく別の考え方を持つ人々のことでもあります。大ベストセラー「神なるオオカミ」の同作者による、筆者の体験を下敷きにした物語です。】

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