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6年生の今月の本


六年生のカレンダー タイトル 六年生のカレンダー
著者 砂田 弘
出版社 偕成社
 

 お母さんは、知子(六年生)と光一(四年生)に、いつも「鉛筆は自分でけずりなさい」と厳しく言います。
「四年生になったら、自分でけずるのがわが家のしきたりですからね」
そう言って、“自分の鉛筆は自分でけずる”ことにこだわります。 それにはわけがありました。お母さん(和代)がまだ子どものころのことです。八つ年上のお兄さんが毎晩鉛筆をけずってくれました。
「きれいにけずった鉛筆を使うと、字がきれいに書けるようになる。そして、勉強がよくできるようになるとよ」
お兄さんは和代に口ぐせのように言って聞かせました。

「さあ、今日から自分の鉛筆は自分でけずりなさい」
お兄さんが和代にそう言いつけたのは、四年生になった日からでした。でも、和代がけずるとどれもいびつな形になります。
「なにがはずかしいものか。和代らしくてよか。自分のけずった鉛筆が見てすぐわかる。それが大切とじゃ」

  まもなくお兄さんは高校から大学へ進みました。しかし、戦争がはげしくなり、お兄さんは航空兵として海軍に入隊しました。

 ある日のこと、お兄さんは特攻隊として出撃することになり、最後の別れをするために家に帰ってきました。その夜、お父さんとお兄さんはおそくまで飲み交わし、いつまでも話し合っていました。翌朝、和代が目を覚ましたとき、お兄さんの姿はもうありませんでした。一番の汽車で、基地へ出発したのでした。

 学校へむかうとちゅう、和代は鉛筆を前の晩にけずるのを忘れていたことを思い出しました。教室について筆入れをあけたとき、和代はあっとおどろきました。鉛筆が、五本とも、きれいにけずってあったのです。それは、死を前にした兄が、愛する妹のためにおくった、最後のプレゼントでした。

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