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6年生の今月の本


まつりちゃん タイトル まつりちゃん
著者 岩瀬 成子
出版社 理論社
 

 小学6年生の行夫は、塾が始まるまえに、コンビニへ寄った。すると、コンビニのドアの前に、小さな女の子が立っていた。「字、読めますか」とその子は言った。そして、猫の絵柄の缶詰をもって「カツオですか。マグロですか。きんちゃんはカツオが好きです」とその子は行夫に尋ねた。
 高校1年生ののぞみは、一人暮らしのお年寄りの話し相手になる、傾聴ボランティアをしている。その帰り道、空き家だと思った家の窓から顔がのぞいているのに気づいた。のぞみが「なんて名前なの」と窓のそばまで行くと、「まつり」と言ってから、あっ、という顔をした。「言っちゃいけなかった。知らない人に言っちゃいけないって、お父ちゃんが言ってたです」
 小学3年生の空は、長く学校を休んでいたことがあった。ある日、猫を抱いておとなりに行った。「ごめんください。おたくの猫を連れてきましたけど。」カーテンがさっとあいて、女の子の顔がのぞいた。「あ、きんちゃんだ。あたしの猫です」と、ガラス戸をあけた。空は、「うちはとなり。チョコレートをいっしょに食べませんか?」と言った。その子は困った顔をして「お留守番のとき、知らない人は家に入れちゃいけないって、お父ちゃんが言ってたです。悪いおじさんが来るかもしれないって、言ってました。だから、だれかが来ても、戸をあけちゃいけないんです。静かにして、だれもいないようなふりをしてなきゃいけないって、返事もしちゃいけないって、言ってたです」と言った。

●小さな女の子の名前は、「まつりちゃん」。だれもいないようなふりをして、きんちゃんと二人でお留守番をしています。そんな「まつりちゃん」との交流が、一章ずつ異なる人物ごとのエピソードで綴られていきます。各章を個別に読むと、少し寂しさが漂う文章に感じられるかもしれません。けれど、それぞれのエピソードを順に読んでいくと、“人の強さ”や“前向きになる心の変化”が描かれていることに気付くでしょう。

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