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6年生の今月の本


ピカソ君の探偵ノート タイトル ピカソ君の探偵ノート
著者 舟崎 克彦
出版社 パロル舎
 

 四月八日、午前八時二十八分、桜町警察第三派出所の新任巡査、出口秀之進(28)は、幻を見たと思いました。目のさめるようなトマト色のスポーツカーが、風のように視線のさきっちょをちょんぎっていったのです。けれど、巡査は車の色に驚いたのでも、その速さに驚いたのでもありません。いっしゅんまぶたに点滅したその運転席には、なんと、ランドセルをしょった小学生がゆうぜんとハンドルをにぎっていたのです。
「うそ、うそ、……!!」
巡査は小さくさけんでから、あわててまぶたを二、三回こすり、いすをけって表通りにとび出しました。

 けれどときすでにおそく、トマト色の車は、いちじんの風ぼこりとなって、走り去ったあとでした。はたして運転席の人物は本当に小学生だったのでしょうか。
「すくなくとも、ランドセルはしょっていた……」
 巡査は自分にいいきかせました。

 巡査が、見たのはやはり幻だったのでしょうか。いえ、そうではありません。スポーツカーを運転していたのは、れっきとした小学生です。
「えっ、そんなばかな!」
ですって。それが、事実なのです。運転していたのは、杉本光素という名の小学生。しかし、ただの小学生ではありません。23歳の小学生なのです。

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