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6年生の今月の本


二分間の冒険 タイトル 二分間の冒険
著者 岡田 淳
出版社 偕成社
 

 それは体育館にシートをしいている時だった。かおりが拾ったとげぬきを手にした悟は、
「これでさぼれる!」
と喜んだ。「二分間以内に戻るんだぞ」という先生の声を尻目に、とげぬきを返すため保健室へ向かう悟だったが ――。とちゅうに黒ネコがいたのだ。

 黒ネコは
「そのとげぬきで、見えないとげを抜いてくれ。そのかわり、おまえののぞみをかなえてやるよ」
と言う。悟はよく考えようとして
「ちょっとまってくれ」
と言った。
「つまり、時間がほしいってわけか」と黒ネコ。
「そう、時間をくれ」

  何と、それが悟ののぞみとしてかなえられ、悟は異次元の時間にすべりこんでしまった。現実の世界に戻る方法はただひとつ ―― この世界のどこかにかくれているおれをさがし当てることだ。そう黒ネコは言った。

「時間はたっぷりある。どのくらいあるかというと、この世界でおまえが老人になるかならないかというころ、ようやくもとの世界で二分間がすぎようかって計算なんだから。 ―― だが、黒ネコをさがしてもむだだぜ。ヒントをやろう。おれは、この世界でいちばんしたたかなものの姿をしているよ。じゃあ、あばよ」

 黒ネコはどこかへ消え、悟はしかたなく歩き出した。深い森。底知れぬ闇。行く手にたき火が見えた。そこには、悟の学校の六年生ばかり十数人がいた。だが、誰も悟のことを知らない。顔や名前は同じでも、別世界の人間なのだ。

  みんなは「竜の館」へと行く役を悟とかおりに押しつけて、そそくさと去って行った。どうやらこの世界では二ヶ月に一度、子どもが二人ずつ「竜の館」へ行くことになっているらしかった ―― 竜のいけにえになるために、いや、竜と戦うために。

 「竜の館」には、全部で男女三十組の子どもたちが集まっていた。毎晩ひと組ずつ、竜と対決するのだ。負ければ恐ろしい運命が待っている。悟とかおりの目の前で、竜との戦いに敗れた子どもたちが次々と消えていき、とうとう悟たちの番がきた。

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