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6年生の今月の本


ふしぎなことば、ことばのふしぎ タイトル ふしぎなことば、ことばのふしぎ
著者 池上 嘉彦
出版社 筑摩書房
 

 ある田舎のお寺のお坊さんのところへ一人旅の僧から、問答をするからよろしくという手紙がきました。ところがお坊さんはこれまで問答というものはしたことがなく、どうしたものか困りはてていました。そこへこのお寺の門前のこんにゃく屋の主人がやってきて、私が和尚さんの代わりになってあげましょうと言いました。

 こんにゃく屋の主人が和尚さんの着物を着て座っていますと、その旅の僧がいばってやってきて、無言の問答を始めました。旅の僧はまず両手の親指と人差し指とで小さな丸を作ります。すると、こんにゃく屋の主人は両方の腕で大きな円を作って見せました。次に旅の僧が右手の三本の指を突き出しますと、こんにゃく屋の主人は右手の五本の指を広げて見せます。さいごに、旅の僧が右手の四本の指を突き出しますと、こんにゃく屋の主人はあかんべえをして見せます。旅の僧はこれはえらいお坊さんだと思いました。お日さまのつもりで丸を出したら、お月さまと答える。三千世界(つまり、この大宇宙)は、と問えば、五戒(してはならない五つの戒め)で保たれる、と答える。さらに、四恩(人が受ける四つの恩)はどこに、と問えば、目の下にありと答える。これはとてもかなわない、と思って旅の僧はあわてて逃げて行きました。

 こんにゃく屋の主人は、奥で隠れていた和尚さんのところへ行って、
「問答なんてつまらないものだ。僧がおまえのところのこんにゃくはこんなに小さいのだろうと聞いてきたので、わしは、いや、こんなに大きいぞと言ってやった。そしたら、値段は一つ三文かと問うてきたので、いや、五文だと答えてやった。するとそれを四文にまけろというものだから、あかんべえをしてやった。そしたら逃げていったよ」
と言ったということです。

――この本の、「こんにゃく問答」についての説明部分より

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