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> クラバート
タイトル | クラバート | |
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著者 | オトフリート・プロイスラー | |
出版社 | 偕成社 | |
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時は中世。まだあちこちに魔法使いが住んでいた頃。14歳になるヴェンド人(東部ドイツのラウジッツ地方に住む少数民族)の少年「クラバート」は、元旦から門付け(かどつけ)をして歩いていた。クラバートには親がなかったが、彼は二人の友だちといっしょに、村から村へと移動する自由きままな生活を楽しんでいた。 そんなある日、クラバートはきみょうな夢をみる。止まり木にとまった11羽のカラスが、クラバートの方をじっと見ているのだ。そして遠く、空中からしわがれた声がひびいてくる。 その日から、クラバートは親方のもとで見習いとして働くことになる。仕事は死にそうなほどにきつく、クラバートは職人頭(しょくにんがしら)のトンダの助けがなければ、毎日の生活をとうてい耐えていけなかった。それなのに、ほかの職人たちは誰一人疲れた顔をしないし、汗もかかないし息も切らさないのだ……。 そう、彼らは親方から魔法を教えてもらっていた。親方の力でカラスの姿にされながら……。 クラバートも魔法を習いながらだんだんと水車場での生活になれていく。 けれども水車場に来てむかえた最初の大晦日(おおみそか)の夜に、悲劇が起こった。一番の仲間だったトンダが死んだのだ。そして年があけ数日後、トンダのベッドには見たことのない少年がいた。新しい見習いだ。何も知らない新入りは、トンダの服を着てそれが自分にぴったりなのを不思議がっている。そのようすは一年前のクラバートとまったく同じだった。 ほかの仲間たちはといえば、トンダという人間がいたことなどまるで知らなかったかのように、今まで通りの生活を続けていた。クラバートはいいようのない不安を抱えながらも生きていくために日々の仕事を続けるしかない。 ただその頃、一人の少女の面影が、クラバートの中にすみついていた。まだトンダがいた頃、二人で出かけた復活祭の夜に見た少女のことを、クラバートは忘れられずにいたのだ。けれども同時に、トンダの言ったこんな言葉も忘れてはいなかった。 「いいか、いつか好きな女の子ができても、その子の名前を水車場でもらすんじゃないよ。口がさけても、もらすんじゃないよ。いいか、だれにももらしてはいけない。起きているときも、寝ているときもだ。さもないと、おまえも相手の女の子も、ふたりとも不幸になってしまう。」 【 トンダはいったいクラバートに何を教えようとしたのでしょうか? そんなクラバートに次々と試練(しれん)がおそいかかります。「親方」という名の絶対的な支配者、見えない敵、誘惑。そのなかで、少年は本当に大切なものが何なのか探しつづけます。魔法の力を身につけることと引きかえに失うものの大きさを知ったとき、クラバートはどんな道をえらぶのか? 彼は水車場で生き残ることができるのか? ……男の子にはぜひ読んでもらいたいお話です。ホントの「つよさ」を知りたい人に。】 |