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> 空を飛んだオッチ
タイトル | 空を飛んだオッチ | |
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著者 | 海老沢 泰久 | |
出版社 | 角川書店 | |
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小学校の先生をしている岡村真理子は、ある朝、担任の女の子が、足が不自由なことを理由にクラスメイトから、からかわれたことを知ります。昔、自分もまた同じ理由で学校の友だちから仲間はずれにされていた真理子は、その日、教室に行くと、クラスの28人を前にしながらこんな話をして聞かせるのでした。それは空を飛んだ少年の話……。 「オッチ」 と呼ばれるその少年は、小学校5年生のある日までは、どこにでもいるごく普通の男の子でした。勉強はあまり得意ではなかったけれど、学校から帰るとランドセルをおく間も惜しんで(おしんで)遊びに出て行くような、元気な子でした。 オッチはその日もカバンを投げ出すと、さっそく一人で山へ行きました。前の日にしかけておいたワナがどうなっているか、オッチは教室にいるときから気になってしかたなかったのです。もしかしたらメジロがかかっているかもしれない……期待に胸をふくらませながら目ざす松の木に登っていくオッチ。けれど枝につけておいたトリモチには、羽が一枚くっついていただけで、メジロがつついた跡はどこにもありませんでした。 「やっぱり、みかんとかイチジクとかアケビじゃないと駄目(だめ)なのかなあ」 彼の体は宙に浮いて、その両足は地面からずっとはなれたなにもない場所でふわふわと揺れていました。自分が飛べることを知ったのはそのときでした。 その姿を見たおばあちゃんは台所に力なく座りこんで、それから一時間以上も口をきかず、じっとだまって仏壇に向かっていました。そしてようやく口を開くと、オッチにむかってこう言いました。 「いいかい、いまおばあちゃんのまえでやってみせたことは、ほかの人のまえでは絶対にしちゃいけないよ」 でも、それを守ることはできませんでした。オッチが空を飛べることを知った人はみんないままでとは違った目でオッチを見るようになってしまいます。空を飛べなかった頃と同じようにオッチと話をしてくれる人は、おばあちゃんと、同じクラスの真理子だけになってしまいました。 生まれつき足を自由に動かすことができなかった真理子は、いつもひとりぼっちでした。空が飛べると知らなかったころ、オッチはそんな真理子をよそよそしい気持ちで見ていたことを思い出します。でもオッチには今初めてわかったのです。真理子がどんな気持ちで学校に来ていたのか、その心の中が。やがて長い夏休みが始まり、二人は毎日のように一緒に遊びました。オッチは真理子のことを親しみをこめて 「ぴょこたん」 と呼びました。オッチはぴょこたんに水泳を教えます。水の中からおいでと呼ぶと、真理子は言いました。 「泳げないもん」 そうして泳げないと思っていた真理子は、泳げるようになりました。一緒に空も飛びました。真理子に会うのが楽しみで仕方なくなるオッチですが……。 【 普通の人にはとても出来ないようなことができる人もいれば、普通の人に出来ることができない人もいる。「普通の人とちがう」ことは悪いことなの?普通であるってどういうことなの? むずかしいけれどとても大切なこと、みなさんもこの本を読んで考えてみてくださいね。中学校の入試素材文にも使われたことのあるお話です。】 |