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> りんご畑の特別列車
タイトル | りんご畑の特別列車 | |
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著者 | 柏葉 幸子 | |
出版社 | 講談社 | |
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いつものように、ピアノ教室から家に帰る列車にのったユキ。けれど、なんだかいつもとちがうことがあった。ユキの目の前にすわっていたおばさんが、りんごを一つとりだして、シャキシャキと皮をむきだしたのだ。となりの、つとめ帰りらしいおじさんも、おじさんの向かいにすわっているおねえさんも……。ユキが車内を見回すと、おどろいたことに、車内の人全員が、りんごの皮をむいていた。 車掌(しゃしょう)さんは、ユキが「特別列車」の切符を持っていないと言って、りんご畑のまん中にある小さな駅にユキをおろしてしまう。ユキと同じ日だまり村に住んでいる紅(べに)さんと了(りょう)さんの姉弟(きょうだい)が、紙つぶてを投げてよこした。 「メリィさんのところへ行って。」 メリィさんの旅行社は、りんご畑のまん中にあった。 そう言って、ぷくぷくしたおばあさんは、中に赤い液体(えきたい)の入った小さなりんごのペンダントをユキの首にかけ、ジャンパーのえりの中へおしこんだ。 いつのまにか、ユキは石づくりの階段のいちばん下に立っていたのだ。階段の上にはりっぱな玄関(げんかん)があった。ここがどこなのか、さっぱりわからないが、とにかく寒い。 ユキははらをくくって、ひとりでに開いたドアから家の中に入った。家のおくには暖炉(だんろ)があり、ユキはほっとため息をついた。同時に、もう一つため息が聞こえた。ユキは、息をとめてふりかえった。だれかいる。 「だれかそこにいるんですか? だれなんですか?」 もやのような人は、魔王ペキンポと名のった。五百年前、国王バカシルに、みんなから忘れられてしまう魔法をかけられたため、誰からもすがたが見えなくなり、魔法も使えなくなってしまったのだという。ユキがもとの世界にもどるためには、ペキンポの魔法が必要だ。しかし、ペキンポが魔法を使えるようになるためには、バカシルに会って、ペキンポにかけた魔法をといてもらわなくてはいけない。 そんなとき、バカシルのむすこである王子が、王になるための旅に出ることに決まり、おともをする魔法使いをさがしているとの知らせが入った。おともに選ばれれば、バカシルに会えるかもしれない。ユキは、仕事をもとめて家にやってきた、お人よしでそうじ好きのビーバー・チャップといっしょに、おともにえらばれるための計画を考えはじめた。 「なんとかなるわ。ねえ、チャップ。」 【 とつぜん足をふみいれるはめになった魔法の国・メルクリウス。みんなには姿(すがた)が見えないペキンポと協力して、魔法つかいのふりをするユキのたくらみは、うまくいくのでしょうか? この本を書いた柏葉幸子(かしわば さちこ)さんの「天井うらのふしぎな友だち」を読んだ人なら、思わずにやりとしてしまう人物も登場しています。ぜひ、読んでみてください。】 |