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> おき去りにされた猫
タイトル | おき去りにされた猫 | |
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著者 | アドラー/著 足沢良子/訳 | |
出版社 | 金の星社 | |
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十三歳のチャドは、小さな別荘(べっそう)の丘の上にいた。この別荘はチャドのお父さんのものでも、お母さんのものでもない。チャドにはもともとお父さんがいないし、チャドのお母さんは、チャドとはいっしょに暮らしていない。けれど、これまでチャドが暮らしていた、どの里親のところにも、お母さんはたずねてきたし、ちゃんと約束した。 この夏、チャドはソレニックさんの一家といっしょに暮らすことになった。チャドはこれまで、こういう人たちをいつも喜ばせてきた。家の子どもと仲よくしたり、命令されるままに「お母さん」と呼んだり……たとえその人たちが、チャドを好きでなくても。 でもそういう人たちはみんな、夏が終わると、チャドをケースワーカーに放り返した。チャドは里親を喜ばせることをやめた。そんなことをしなくても、チャドがきちんとお金をかせげるようになれば、お母さんはチャドといっしょに暮らしてくれる。きっとお母さんは、最後にはチャドのところに来てくれるはずだ。 チャドは丘の上で、猫(ねこ)を待っていた。初めて猫を見たとき、猫は低いナラの木とクマコケモモの間に消える前に、じっと丘の上から別荘を見下ろしていたのだ。どこかの飼い猫のようではなかった。だれの世話にもなっていない、たくましいのら猫。チャドも、そうなりたいと望んでいた。けれど、猫は用心ぶかく、いつもチャドのことを警戒していた。 ある日、砂浜で釣(つ)りをしている老人の近くに、猫がすわっているのが見えた。チャドの心は、おどった。 老人は、こののら猫に、いつもつった魚をやっているのだった。 しばらくすると、猫はチャドの指のにおいをかぎ、のどをなでさせるまでになった。チャドはうれしくて、にっこりした。けれど、銃(じゅう)で猫を撃とうとしたり、毒入りのえさで猫をころそうとしている人がいることを知る。なんとかしなければ、おそかれ早かれ、猫はころされてしまうだろう……。 |