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6年生の今月の本


風にのってきたメアリー・ポピンズ タイトル 風にのってきたメアリー・ポピンズ
著者 P.L.トラヴァース
出版社 岩波書店
 

 桜町通りで一ばん小さな、古ぼけたバンクスさんの家には、子どもが四人います。一ばん上のジェインに、つぎがマイケル、それから一ばん下のジョンとバーバラはふたごです。バンクスさんとバンクスさんのおくさんは、この子どもたちのせわを、ケティーばあやという太ったおばあさんにたのんでいたのですが、ケティーばあやはいなくなってしまいました。なんのことわりもなしに、だまって、です。

  困ったおくさんは、子どもたちのせわをする人を、大至急(だいしきゅう)よこしてくれるようにと、ほうぼうの新聞社にあてて手紙を書きました。すると夕方になって、公園もほの暗くなるころ、一人の女の人が、バンクスさんの家にやってきました。その日はちょうど、つめたい東風が強くふいていました。

 女の人は、やせていて、手や足が大きく、小さい、キラキラした青い目をしていました。けれども、階段の上から女の人をこっそり見ていたジェインとマイケルは、とてつもないことをすっかり見とどけてしまいました。女の人は、たしかに、バンクスさんのおくさんにつづいて、二階へあがってきたのです。しかし、階段をのぼってではありません。大きなバッグを両手にかかえると、階段の手すりのうえを、上のほうへ、すうっとすべりあがったのです。

 こんなできごとは、ジェインとマイケルの知っているかぎり、けっして起こったことがないのです。下へ、というなら、なんでもありません。ふたりともよくやることです。だけど、上へなんて ―― とんでもない! 子どもたちは、この、はじめてのふしぎなお客さんを、穴のあくほど見つめました。

 それだけではありません。このふしぎなお客さん ―― メアリー・ポピンズは、なんにも入っていない、からっぽのバッグの中から、のりのきいたまっ白のエプロンや歯ブラシ、せっけん、ヘアピンなんかをとりだしたのです。そして、「ねるまえに一さじ」 と書いた紙のはってある、大きなびんをとりだし、大きなスプーンにびんの液体をつぎました。液体は、マイケルがのむと、ストロベリー・アイスの味になり、ジェインがのむと、ライム・ジュース・コーディアルの味になりました。ふたごの赤ちゃん、ジョンとバーバラが飲むと、ミルクになりました。ジェインとマイケルは、おどろきのあまり、目の玉がとびだしそうになりました。

【 風にのってバンクス家にやってきた、メアリー・ポピンズ。空中でお茶会をしたり、絵の中に入ったり、動物の言葉がわかったり、メアリー・ポピンズはまるで魔法使いです。おしゃれ好きでうぬぼれやで、いつもつんけんと怒ってばかりの彼女ですが、ジェインもマイケルも、メアリーが大好き。それはどうしてなんでしょう?

 みなさんもぜひ、メアリーが連れていってくれるふしぎな冒険の世界をのぞいてみてください。きっと、風変わりなメアリー・ポピンズが大好きになりますよ。】

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