トップページ > 読書案内 >  6年生の今月の本 > 6年生におすすめの本
 > ユタとふしぎな仲間たち

6年生の今月の本


ユタとふしぎな仲間たち タイトル ユタとふしぎな仲間たち
著者 三浦 哲郎(みうら てつお)
出版社 新潮社
 

 お父さんをタンカーの事故で失い、ぼくはお母さんのふるさとである東北の山間(やまあい)にある村にやってきた。ぼくの名前は勇太(ゆうた)。小学校六年生だ。

  でも、ぼくのことをみんなユタってよぶ。六年生にしては小さく、やせっぽちで、肌色(はだいろ)も村の子どもたちと比べればずいぶん白い。そんなぼくのことを 「東京のもやしっ子」 といって、だれも仲間に入れてくれようとしない。この村にきてから、いつもひとりぼっちだった。

 ある日、虎吉(とらきち)じいさんが、ざしきわらしのことを教えてくれた。子どものかっこうをした妖怪(ようかい)のことらしい。ぼくはためしにざしきわらしに会ってみようと思った。大黒柱を中心にして四つの部屋ができている家に、ざしきわらしは出ると虎吉じいさんは言う。じいさんのいうとおりにしてみたら、ほんとうにざしきわらしたちに出会った。

  ざしきわらしは、ペドロをはじめ九人いた。みんなへんてこだけどゆかいで親切ないいやつばかりだった。ぼくは、たちまち彼らとなかよしになった。

 雨の季節がやってきた。
「この分じゃ、明日の午後三時ごろから、ぽつりぽつりやってくるだろうな」
と、ペドロが言う。その翌日、ぼくがゴム長をはき、かさをもって分教場へ行くと、みんながぼくをはやし立てた。
「東京者は、おくびょうもん! 天気がいいのにかささして!」
ぼくは珍しくむっとした。そして、みんなの前に両手をあげて、こう叫んだ。
「ぼくは雨がこわいんじゃない。午後から雨になる。ぼくにはちゃんとわかっているんだ。なんなら、雨がふり出す時間をいおうか? それはね、午後の三時ごろだ」
みんなは、ぽかんとしてぼくをながめていた。

 ところが、間の悪いことに、ぼくが話し終わったとたん、雲間から明るい日差しが頭上に照りつけてきた。みんなは急に勢いづいて、わあわあとぼくに非難の声をあびせた。すると、突然あらわれた中学三年の大作が、
「おもしろいじゃないか。どうだろう、きょうの午後三時に、雨がふるかふらないか、このモヤシのユタと賭けをしてみんかのう」
といった。どっと賛成の声があがった。いまさらあとにひけず、ぼくは
「ああ、いいとも」
といってしまったが……。

【 勇太の予言通り、はたして雨は降るのでしょうか……? ざしきわらしとの出会いをきっかけに、ユタは少しずつたくましくなり、みんなともうちとけていきます。かつて、ND清心中や安田女子中の入試に素材文として使われたことのある本です。】

Page Top