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> のんのんばあとオレ
タイトル | のんのんばあとオレ | |
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著者 | 水木 しげる | |
出版社 | ちくま文庫 | |
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オレが子どもだったころは、境港(さかいみなと)あたりでは、神仏に仕(つか)えたりする人のことをのんのんさんといっていた。その人がおばあさんなら、のんのんばあさんとよばれることになるわけだ。 その、略(りゃく)してのんのんばあが、どうしたわけか、子どものとき、いつもオレの家にきていた。 のんのんばあは、年中行事、つまり七夕とかお盆とか、祭りとかいったものについてよく知っていて、いろいろな話を聞かせてくれた。七夕のときは、どこからともなく、ササをもってきて、自分もたのしみながら、ササに紙をむすんだりして、空を指さして、七夕の説明をしてくれた。 のんのんばあは年中行事のほかにも、お化けとかふしぎな話とかもよく知っていた。 うす暗い天井(てんじょう)のしみを見ては、あれは、夜、寝静(ねしず)まってから「天井なめ」というお化けが来てつけるのだ、とまじめな顔をしていう。天井をよくみると、なるほど、それらしいシミがある。疑う余地はない。 また、遠くのほうに行ったりすると、「子取り坊主(ぼうず)」というのがいて、子どもをさらってどこかに持って行ってしまうとか、天気のよいのに雨がふるときは、「キツネの嫁(よめ)入り」が山のなかのどこかで行われているとかいった話をのんのんばあは熱心にするのだった。 オレの家の近くの下(しも)の川という川にそって一キロばかり行くと、松林のなかに、むかし、病院だったという小さな建物があった。 たぶん「子取り坊主」はあそこらに住んでいて、子どもをとるのだろうと、オレは牛がいちど食べた草をもう一度胃から出して食べなおすように、のんのんばあの話を反すうしながら、場所をかってにあてはめて頭のなかにおもい描いていた。 【 『ゲゲゲの鬼太郎』でおなじみの、水木しげるさんが、自分の子ども時代をふりかえって書いた文章です。水木さんはかなり変わった子どもだったみたいですよ。】 |