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タイトル |
ちょっとだけタイムスリップ |
著者 |
花田 鳩子(作) 福田 岩緒(絵) |
出版社 |
PHP研究所 |
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きょうは夏休みさいごの日。あしたから学校だ。ぼくは、つくえのよこにかけてあるリュックのポケットから、サクラ貝をとりだした。いなかからかえる朝、漁からもどったおじいちゃんが、ちかくのすなはまでみつけてきてくれたものだ。こんなにいい色をした大きいやつはめずらしいからっておみやげにくれたんだ。「この貝、一つゆきなちゃんにあげよう」ふいにそう思いついた。ゆきなちゃんはようちえんのころからのなかよしで、きれいなものが大すきだからきっとよろこぶとおもう。
つぎの日の朝、ぼくはさっそく、ゆきなちゃんに青色のおりがみのつつみをさしだした。「お、おはよう。ゆきなちゃん、これ おみやげ」「えっ あたしに?」ゆきなちゃんはテープをピピッとはがしてつつみをひらくと、「わーっ、きれい! ありがとう」と声をあげた。すると、その声をきいて、ちかくにいたきえちゃんやよしきくん、けんくんがとんできた。「ゆうとくん、どうしたの? この貝がら」「どうせどっかで買ってきたんだろ?」よしきくんがいうと、よこでけんくんがうなずいた。「買ったんじゃないぞ。海でぼくが見つけたんだ」本当はおじいちゃんにもらったものだけど、ぼくはかまわず言いかえした。「こんな貝見たことないよね。外国の貝じゃないの? ひろってきたって、いったいどこの海に行ったんだよ」本当はいなかの海だけど……、こんどはもっと大きなうそが出た。「ん……、ハ、ハワイ」「ほんと! ゆうちゃん、夏休みにハワイに行ったの?」ゆきなちゃんも目をまるくしてぼくを見た。ぼくのせきのまわりにはおおぜいあつまってきて、よしきくんとけんくんもだまって顔をみあわせている。みんなのうらやましそうな顔を見ていると、ついいい気もちになってしまって、それからはもう、うそが止まらなくなった。気がついたら、ぼくはハワイにおじいちゃんがすんでいて、しょっちゅうあそびに行ってるってことになってしまっていた。
●本当はハワイになんて行っていないのに、はじめの小さなうそがあまりにも大きくなっていました。こうなると、本当のことを打ち明けづらくなってしまいますよね。ゆうとは、うそをついてしまった後悔から「ちょっとだけタイムスリップしてうそをつく前にもどりたい」と願います。そんなときに担任の先生がしてくれたある素敵な提案とは?
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