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2014年度の作品

No.5 『 親父の独り言 』清心中・女学院中・安田女子中/匿名希望

 せめてあと5分寝かせてやりたい・・・。そんな思いを振り払って、目覚まし時計で起床できなくなった娘に声をかける。机の上には解きかけの問題集・・・。夕べも遅くまで頑張ったようだ。
 一年くらい前から、我が家は受験モードに入った。娘の希望を叶えるため、自分にできることを考え、どうすべきかについて家族で話しあった。妻との衝突も一度や二度ではなく、受験前まで肝心の本人以外が持つのかどうか不安になったこともある。  娘は辛くないのだろうか。受験しない同世代の子は、小学生らしく友達と楽しく遊んでいるというのに・・・。学校から真っすぐ家に戻り、脇目も振らず机に向かう。一時やる気の見えなかった時期があったので、本気で「止めてしまえ!」と怒ったことがあるが、娘は泣いても止めるとは言わなかった。
 
勉強ばかりできても・・・と言うは容易い。自由に遊ばせながら大らかに育てたい。私もそう思う。でも今の世の中で夢を勝ち取るためには勉学が不可欠だ。そのことに気づき、自らを律し、苦手でも勉強と向き合っている受験生を私は立派だと思う。
 
なつかしい塾までの道・・・。一体何回送迎したことだろう。その度に沢山の娘の同志を見かけた。疲れて大変なはずなのに、みんなの顔は一様に明るく元気だ。まだ小学生なのに、小さな背中に大きな夢を背負って頑張っている。そう思うと、みんなは同志である一方ライバルでもあるので、叶わぬとはわかっていても、全員の祈願成就を願わずにはいられなかった。
 受験することについて、それが最終的に娘の幸せにつながるか否か、今は知る術もない。勝負事は運も大きく左右する。仮に運良く勝って最初の夢を叶えたとしても、夢は叶った時点で夢ではなくなる。さらに高い頂を目指して過酷な道を歩まなければならないのだ。2014_05
 私もかつて夢を持った時期があった。塾の経験はないが受験もした。結果は残念ながら失敗に終わり、夢は儚くも敗れたが、ありがたいことに、そのことを後悔したことはない。却って失敗したからこそ今があることを幸せに思うことさえある。
 
受験はドラマであり、少し大げさに言えば人生の縮図である。本人と限られた一部の者しか知らないこのドラマはこれからも続く。今はただ、娘が悔いのない人生を歩めるよう願うのみだが、一つ確実に言えることは、この度の受験を通じて娘が少しだけ大人になったことと、家族の絆が一層強くなったこと。  
 塾の先生方、娘のお友達には本当にお世話になりました。この場をお借りしまして、深くお礼申し上げます。

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