三年前、家庭学習研究社にお世話になった兄は自分の意志で受験を決め、こつこつと真面目に勉強に取り組み、今楽しい中学生活を送っています。その姿に影響された弟は、自分が受験して合格することは当然のことと思っていました。外遊びが大好きで要領のよい子。小学校の勉強はそこそここなせても、緻密で正確な知識を積み重ねていく受験勉強にそれが通用するわけがありません。毎回のテストの成績は悪く、その修正である復習もきちんと出来ないという毎日。正直この子は中学受験には向いていない。精神的にも幼いと感じる日々でもありました。
「強い意志があって受験を決めたわけではないのだから、もう塾はやめなさい。好きなことをしたり、友達と遊んでいたりした方がいいよ。」
何度も退塾を勧めました。しかし、子供はかたくなにそれを拒否し、きちんと勉強すると約束しました。しかし、それが守れず、また退塾の話が出るという繰り返し。とうとう冬休みも目の前にせまっているという状況。さすがにこの時期になると呑気に構えるわけにはいかない自分の立場をようやく本人もわかったようで、現実の厳しさを目の当たりにして子供自身かなり悩んでいたようでした。そしていつもの明るさにも少し陰が出始めていました。しかし、それでも受験から逃げ出さないわが子に私はついに根負けしてしまいました。
一歩引いてよく考えてみると、子供にとっては一生懸命頑張っているのに、幼さゆえに結果が伴わない。でも親からはよく見られたくて、稚拙な嘘をついたり、隠し事をしたりして親からの信頼を失う。その悪循環の繰り返しだったのではないかと気づいたのです。親としては精一杯応援するしかないと考えを変えました。それから「点数は関係ない。間違っていてもいいんだよ。その間違いは力にとっては宝物。どれだけ間違っていた所がわかるようになったかが大切よ。」と、今までのテストの見直しを一緒に始めました。ほとんど暗記をしていないが故に成績の悪い理科・社会は、次のテストでは絶対に間違わない! と気合いを入れて覚え、算数と国語は時間の許す限り塾のプリントをやりました。
今までのことが信じられないぐらいの集中力で勉強をし、あっという間に試験本番を迎えました。子供にとってはこの短期間の集中力と勉強量はかなりの自信につながりました。
「今までテストを受けるのが苦痛だったのが、少し楽しくなってきた。」
と、嬉しそうに話すこともできるようになりました。しかし、最後の最後までテストでは全く結果はでません。かなり落ち込んでいる時に先生からは、
「普段の実力はついてきている。結果が出ないのは極度に緊張しているから。もっとリラックスして試験に臨めば大丈夫。」
と励まして頂きました。
試験当日は緊張をほぐす方法を教え、暗示をかけ、
「大丈夫だよ。あれだけ頑張ったんだから。」
と笑って見送りました。
受験は最後の最後まで、どう転ぶかわかりません。結果を出すことも求められます。でも親の立場からすると、子どもが目標に向かって努力する姿を見て応援できることは幸せなことだと思います。子どもがひとつの目標に向かって努力することの充実感を感じることができれば、自分自身の大きな自信につながります。その証拠に、最後の試験を終えた子どもの顔は清々しい表情でした。その顔を見て思いました。
「力の受験は大成功!」
合格しても行きたい学校しか受けないと、自分の実力以上と思える学校ばかりを選び、難しいかなと思っていた中での合格。本人は大喜びして、頭の中はもう中学校生活と部活動のことでいっぱいです。
人の先頭に立ってやんちゃをし、いつも叱られてばかりのわが子を愛情をもって指導して頂いた先生方に本当に感謝しております。