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2019年度の作品

No.6 『 娘の勝ち取ったもの 』 
         清心中・広島女学院中・近大附広島中東広島/Sさん

 ノートルダム清心合格の報を聞いたとき、喜びと驚きが同時でした。娘が心から行きたかった同中学校合格への道のりは平坦なものではなかったからです。
 一人娘なこともあり、小さな頃から様々な習い事に取り組んできた娘でした。母親と二人三脚でこつこつと取り組み、コンテストでも結果を残す勝負強さも持っていました。そんな娘が5年生の終わり頃、塾で壁にぶつかりました。
 6年生を前に、勉強の内容もシフトアップしていく中、思うように点数が取れなくなっていったのです。割とあっけらかんとして、あまりストイックではない性格の娘でしたが、内面では必死に取り組んでいることが伝わってきました。母親も毎週学習スケジュールを組み、学習のタスクリストを必死に消化していってもテストの点数は伸びません。
 本人も戸惑い、やる気にムラが出たり、そうした姿勢に母親もイライラしたりとスランプに陥っていました。そういう空気が漂う中、私は「塾で先生が言われているように、子供が自分でやりたいと思わなければ身につかない」と諭しました。と言いつつも、つい「勉強しなさい」と言ってしまうダメな父母でした。
合否判定も芳しいものではなかったのですが、塾の先生は「清心に受かる実力は持っていますよ」と説明してくださったので、親子共々その言葉を信じて日々取り組んだのです。そのまま夏休みが過ぎ、秋に入っても相変わらず点数は伸び悩みました。ただ、あまり思い詰めない娘の性格のおかげもあり、塾には楽しく通っていました。送り迎えでも「塾どうだった?」と聞くと「楽しかったよ」という返事以外が返ってきたことはありません。
 そして、受験直前の冬を迎えました。我が家でやったことは変わらず、学習スケジュールを立てて消化するサイクルをこなす日々でした。「どんなにがんばっても、点数がよくならない」とこぼしつつ、娘なりにやる気を維持して学習に取り組めたと思います。
 結局、塾ではダントツの成績を残すこともなく、試験日を迎えました。ですが、娘は「第一志望のノートルダム清心に行きたい」という熱い想いを秘めていたようです。それは合格の報せを聞いたときの喜び様から知ることができました。正直、親である私たちでも、合格すると確信していませんでした。娘だけが「絶対に合格してやる」と心に秘めつつ長時間の勉強に耐えていたのです。
 こうして、何年間にも及ぶ親子の受験勉強は終わったのでした。まとめとして、そうした娘の受験勉強を振り返り、他の方々の参考になる点を整理したいと思います。
我が家では、5年生から学習方針を定めるようにしました。例えば、国語が苦手な娘には「コミックや本を与えて活字に慣れる」を掲げましたが、6年生の後半には、国語が得意科目となっていました。また、6年生のはじめには、親子で年間スケジュールや学習の方法論について話し合いました。いずれも、塾の先生のアドバイスが的確でとても参考になりました。
 あとは「勉強しなさいと言いたくなる親の気持ちを我慢すること」です。「勉強しなさい!」という声をより大きくしたり、回数を増やしたりしたら、成績は上がるのでしょうか?試験会場に行くのは子供なのですから、子供の自発的な取り組みだけが結果につながるのです。これは塾の基本方針だと思うのですが、それを信じてきたのは正解だったなと感じています。
 最後に「中学受験で娘が勝ち取ったものとは何だったのか?」と振り返ると、私は「目標に向かって計画を立て、コツコツと取り組んだ結果、成功できた」という貴重な経験だと思っています。志望校に合格したということは、素晴らしい環境を与えられたということであり、その環境を活かすのは、中学受験の日々と同じ学習の積み重ねなのですから。

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