「修道行きたい……」
メンタルが崩れ、一番不安だった夜に、やっと寝入った後でつぶやいた寝言……。
ずっと合格を夢見て、頑張ってきた修道中学の入試の2日前。突然大きな不安が息子を襲ってきた。翌日の塾の最終日の予習中のこと。解けると思っていた問題が解けなくて焦り始めたのが始まりで、どんどん状況が変わっていった。
そばにいた私は、「解けなくても大丈夫。明日質問したら?」「ほかの問題でカバーできるから、心配しなくても大丈夫よ。」などと言っていたが、息子の心には届かず、内心「3日前なのに、メンタルがこのまま回復しなかったらどうしよう……。」と心配な夜を迎えた。「もう寝ようか。朝、早起きして続きをしたらいいよ。できなくても大丈夫だし。」と、半強制的に布団へ誘導した。
「お母さん、寝れない。もう、だめかもしれない。もう、何もしたくない。いやだいやだ、もういやだ。」
これまでにない姿を、ただ背中をさすりながら見守るしかなかった。
小学校三年生の時に行った修道の文化祭。それ以来憧れの学校となり、中学受験をすることを決めた。4年生まで通信教育で頑張り、5年生から入塾した。だが、友達が大好きな息子は、6年生の夏までは放課後の友達との遊びを大切な気分転換だと言ってやめなかった。「10分でもいいから」と外に出る貪欲さ。自分のペースを崩さない様子に親の方が焦る毎日だった。何度も言い合いになり、険悪にもなった。だけど、最初の頃はできない問題に腹を立ててばかりだったが、だんだん、自分の弱点にも向き合うようになり、自分なりの勉強法やリズムも身につけてきて、6年生の秋には、私の口出しする回数もだんだん減ってきた。そして、どんなときも「受験をやめたい。」とは、決して言わなかった。
今、振り返ると、ずっと不安と戦っていたのかなと思う。それを息子なりの発散方法で発散しながら、ここまで走り続けてきたのだろう。スピードアップすることもスピードダウンすることもなく、コツコツ走り続けてきたのだと思う。そして、たまりにたまった不安が2日前に爆発したのだろう。
受験前日、なんとか不安を乗り越えられ、親子で気合いを入れ直す。当日はいつもの息子。「もう大丈夫。」と思った。
彼が言ってくれた、3つの「ありがとう。」がある。
1つめは、2日前の不安だった夜、寝る前に「少し落ち着いてきた。もう大丈夫だと思う。(そばにいてくれて)ありがとう。」
2つめは、塾の最終日「ずっと送り迎えしてくれて、ありがとう。」
3つめは受験が終わった日の「受験させてくれて、ありがとう。」
うれしかった。しんどかったことも、腹を立てたことも、全てがこの言葉で消えてしまった。多分私は、この3つのありがとうを、ずっと忘れないと思う。受験を通して、息子のいいところも悪いところも、たくさんの発見があった。そして、受験を終えた今、周りの人に感謝できるその成長ぶりには、驚きを隠せない。合格にも勝るうれしさである。息子を受験させて本当に良かったと思う。不安と戦い乗り越えた息子に、「本当によく頑張ったね。これからが楽しみだね。」と褒めてあげたい。
ずっと支えてくださった呉校の先生方、一緒に頑張ってきた仲間たちに感謝の気持ちでいっぱいだ。