引っ込み思案で内弁慶な娘は、新しいことをすすめても必ず躊躇します。対して同じ親から生まれている長男は、ノリと勢いで何事も突き進んでいくタイプです。似ているところもたくさんあるけど、対照的な兄妹で仲良し。娘は生まれた時から大好きなお兄ちゃんの真似ばかりしていました。音楽教室も、陸上教室も「お兄ちゃんがするならする!」と言って入りました。
ということで勿論受験もすることに……。あなたはのんびり屋さんだからやめておいたほうが良いと説得したのですが、頑なに拒否されました。
一年後、長男は広島学院に入学し、娘は自動的にお兄ちゃんの真似ができなくなりました。どうするのだろう、と心配していたら「お兄ちゃんと同じぐらいのびのびできる女子校に行く!」と宣言しました。
思えば、この決断も娘にとっては大きなことだったのかもしれません。自分の道を進む大きな一歩だったのだと思います。
しかし、勉強の姿勢が兄妹で全然違うことに、家族は最後まで振り回されてしまいました。ブルドーザーのようにひたすら進んでいく長男に対して、スコップで掘り進める娘という感じ。娘はゆっくり、そして少しずつしか勉強しないのです。やきもきしました。つい比べてしまいました。どちらも一長一短でそれぞれの勉強の仕方を尊重してあげれば良かったのに、良い結果の出た長男の方法が正しいのではないかと思い、押し付けようとしてしまいました。
「もっとたくさん問題を解いた方が良いのでは?」
「もっと先生に質問したら?」
娘のペースがあるし、引っ込み思案の娘が先生に質問に行くことはとてもハードルが高いことだなんて考えてあげる余裕がありませんでした。何度も何度も言って、励ましたり脅したりしたら直前になってようやく質問に行けるようになりました。
塾の広告に『中学受験は親子の二人三脚で』と書いてありましたが、私は最後まで娘と二人三脚できているか不安でした。無理させていないか、親の期待を押し付けていないか、悩み、手探りでした。長男の時上手くいったからなんとかなるかーという期待は打ちのめされました。子どもは本当に十人十色。同じ親から生まれても決して同じではない、ということが身に沁みました。
マイペースな長女に私はつい、
「本当に大丈夫だと思う?こんなんで合格できると思う?」
と何度も聞いてしまいました。でも、その都度長女は
「だーいじょーぶ、だーいじょーぶ!」と何の根拠があるのか答えていました。受験を辞めると言ったことは一度もありませんでした。その前向きさには長男も感心していました。
結果的に第一志望校に合格できて、びっくりです。この1年間不安で暗いトンネルの中のようだと思う時も多々ありましたが、娘はスコップでゆっくり掘り進めるように勉強し、目標達成したのです。きっと娘はこれからも私たち家族をひやひやさせながら、マイペースに成長していくのでしょう。でも、これからはもっと娘を信じて大きな心で見守っていけたらいいなあと思います。
この原稿を書いたのは、私と同じように兄姉と比べて焦ったり、悩んでしまうお母さんやお父さんがいなくなりますように、と思ったからです。受験が終わった今だから言えるのかもしれませんが、子どもの力と塾を信じていればきっと幸せな結果がついてくると思います。
次の受験生とご家族の幸運をお祈りして終わりとします。