スマートフォンを持つ手が汗ばむ。初めて受験した学校の合否を確認するタブを押すと、「合格」の文字が見えた。仕事先から自宅で待つ子どもに電話をかけると、「やったー!」と喜びの声。そして、「よかった……」と涙声に変わった。
ここまで頑張ってきてよかった。親子とも心からそう思ったが、子どもが6年生になって「受験をやめたい」と言ったことがあった。
「勉強がつらい。友達と遊ぶ時間がない。近くの中学校へ行き、公立高校へ行ってもいいと思う」と訴えるわが子に、私は「そうよね」と共感するしかなかった。そこで、子どもに受験をするメリットとデメリットを書き出してもらい、すぐに結論は出さずにしばらく考えよう、ということにする。時間をおかず、塾の先生にも相談し、子どもの様子を見て下さることになった。
しぶしぶでも塾に行けば授業は楽しく、先生も大好きなので、そのうち「やめたい」は収まった。塾の先生方は子どもの性格や得手不得手を本当によく理解して下さっていて、親も相談しやすく、何度も励ましていただいた。
受験の日、ほかの受験生に紛れて校舎に向かっていくわが子の背中を見送りながら、涙が浮かんできた。どうか、自分の力を発揮してほしい。それだけを願った。
3年間塾に通い、先生方の支えのおかけで努力が報われる経験をさせていただいた。これから先、変化の激しい社会のなかで、すべての努力が実を結ぶとは限らない。中学受験という山を、リタイアもちらつきながら登り切った経験は、わが子の土台になったと思う。先生方に、深く感謝致します。