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2021年度の作品

No.2 『 本当の自分の気持ち 』
        広大附属中・清心中・女学院中/Nさん

(どうせ受かってないから……)
 私はいつも何か結果を見るときは自分を下に見るクセがある。附属の合格発表の時間になり、スマートフォンで受験番号を平静を装って探すお母さんの横で、私はシラけた表情で画面を見ていた。
「えーと、私の番号は……」
と、私が見つける前にお母さんが叫び声をあげた。
「キャー! あるあるアル!」
うれしさや喜びより前に、驚きが出た。
(エッ、本当に? 本当に! エー!)
 そして少しして喜びがわいてきて声が出た。
「受かったー!」
 やっと自分で自分を心からほめてあげることができた。ほっとした。
 思えば家庭学習研究社に通い、受験の準備を始めた時から、自分の成績に大きい期待をしないようにしてきた。その自分に言い聞かせる気持ちが知らず知らずに重荷になっていた。
 私は二人の兄が家庭学習研究社に通い、二人とも附属、学院を含め受験した学校全部に合格していたため、「当然Nさんも受かるよね」という周囲からの期待ともプレッシャーともいえない微妙な空気の中で過ごしてきた。しかも、呉校には私から見ると天才としか思えない友達がたくさんいて、その友達と同じ中学に行くと言うのも少しためらいがあった。マナビーテストの結果で順位表に名前が出てうれしさがありつつも、いつも友達の名前の下に自分の名前がある、そんな中で六年後期の面談で志望校を聞かれたけど、「附属」と口に出す気持ちはわかなかった。
 しかも、理科と社会が苦手で本当はそこを頑張らないといけないのは分かっていたけれど、素直に志望校を人に言って夢中で突き進む気持ちになれないため、「面倒くさいから」と言う言葉でごまかして手をつけられないでいた。すると、呉校の先生方、特に髙橋先生が「自分にとってちょっと面倒くさいことがあなたのやるべきことであり、有用なことです。」とメッセージをくれた。今振り返ると、本気を出せない私を見透かされていたのかなと思う。幸いにも、親にも志望校について言われなかったが、見えない空気がおしよせていた。
 そしていよいよ十一月半ばになり、髙橋先生から「個別課題をやろう! あと歴史年表を作ってみようかな」というメッセージをもらい一番苦手な社会に取り組まないといけない気持ちになった。それから二か月間、私は自分でも驚くほど社会に取り組むようになった。年表やまとめノートを作り、個別課題をやりこなしたことで、社会が分かるようになってテストの点も上がってきた。社会の勉強はお父さんも手伝ってくれて、一緒に勉強できたので面倒と思わずにできたのかなと思う。
 十二月にはまだ「落ちたらどうしよう。親は兄弟は先生はなんて思うだろう。」と思っていたが、受験直前には髙橋先生からもらった「人事を尽くして天命を待て」の気持ちで焦りはなくなっていた。というものの最難関校に受かる自信はなく、なるべく自分に期待しないように努めていた。
 しかし受験の最後に合格発表を見た時、じわじわ喜びがわくのを感じて、やっと見えない空気から解き放たれて本当の自分の気持ちに会えた気がした。
 私が気づかない私の気持ちをくみ取って、優しく背中を押し続けてくれた髙橋先生をはじめとする呉校の先生方、ありがとうございました。
 そして、いつも楽しく話をしながらも一方で高い目標をくれた呉校の友人たちありがとう。

 
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