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2022年年度作品一覧

No.1 『 努力とは 』
        広大附属中・学院中・修道中・城北中/Kくん

 マンガやアニメに出てきて、周囲の人を圧倒する「天才」は、やっぱりかっこいい。僕は、家庭学習研究社に入って受験勉強をしているとき、そんな「天才」に憧れてしまった。「天才」に憧れを抱いた故、僕は五年生のころから、「天才」と反対の意味をもつ(と、思いこんでいた)「努力」を、はずかしいことだと思っていた。

 始まりは、知っている人も多いことだろう、「NARUTO」というマンガを読んでいたときだった。「うちはイタチ」という、敵をどんどん倒していくキャラを見て、「ああ、これが天才なんだな」と、一目で感じた。練習もせずに、一族秘伝の術を習得し、皆の目標となるイタチの姿はまさに、僕の思い描く天才そのものだった。
そんな時に僕はふと、本棚から「NARUTO」の一巻を取り出した。僕が開いたのは、主人公のナルトが登場するページ。ナルトは勉強や術の使い方があまり上手くないこともあり、周囲の人からは、努力しているのにも関わらずに落ちこぼれとバカにされ、軽べつされた人物だ。僕はそんなナルトを見て、かわいそうだなあ。と何度も思った。やっぱり天才の方がかっこいい。僕は初めてそう思った。

 六年生になった。先ほどの思いはまだ心の中に残っていた。受験まで残り一年。最近はテストの結果がとても良く、周囲から天才だと言われた。とても嬉しかった。テストの結果が良いことには理由があった。天才に憧れる心が、天才になりたい心にだんだん変わっていき、夜中まで勉強していたからだ。しかし、努力している姿を見られるのは恥ずかしいと思っていたため、両親や妹にかくれて勉強していた。
 そうして、六年生の夏が終わろうとしている頃には、朝シャキッと起きられずにいた。もちろんそれは、夜中まで無理をして勉強しているからだ。十分な時間寝られていないこともあり、僕はイライラしていた。

  そんな時、母さんが、
「最近寝られていないみたいだね。もう長いこと続いているし、病院にいく?」
と、聞いてきた。うるさいなあと思った。
「関係ねえだろ。ほっとけよ。」
その言葉は自然に出ていた。その時だった。

「関係なくないよ! なんでイライラしているの? こっちは心配しているの! ほっとけるわけないじゃん!」
僕は驚いた。母さんがこんなに声を荒げるのは久しぶりだったからだ。
僕は迷惑をかけていたのかと思っていたら、さらに母さんが
「学校で何か嫌なことがあったの?」
と聞いた。
(ちがう。ちがうんだ。こんなに迷惑をかけるつもりはなかったのに……)
気がつけば、僕は、今までかくしていた考え方、行動、全てを母さんに話していた。

「やっぱりそうだったんだ。とんびがたかを産んだのかと思ったよ。」
「えっ。分かっていたの?」
「ううん。詳しいことは知らなかった。けれど、私の子どもがそんなすごい成績を残すなんて、長い時間勉強している姿もあまり見ないし。おかしいなと思っていたよ。」
さらに母さんが言った。
「いい? Kは努力型なの。私と同じ。私は、勉強もせずに良い成績が出せる人なんていないと思う。努力だって才能だもの。」
努力だって才能。この言葉は僕の心の奥まで響いた。努力できる人が天才なんだ。努力をしていない人なんて、滅多にいないんだ。
「だからこれからは、私とお父さんに努力している姿を、正々堂々見せてね。」
「うん。」
僕ははっきりと答えた。

 第一志望の広島学院。会場にはたくさんの人。本当に受かるかな。そんな考えは出てこない。だって僕は、たくさん努力したのだから。

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